Ultimate 10月12日号

特集1
キングバイパー
半年後の総括

このロッドが生まれた背景
「ショアコンペティション(SC)ヘビーバーサタイルロッド」と銘打たれて鳴り物入りで
今年の春にデビューした、川村光大郎氏監修の STZ SC6111HSB=キングバイパー。
すでにフィッシングショーで発表された時点で、単なる汎用性という言葉では表現しき
れない常識を超えた適応性が注目を集めていました。携行本数が限られるオカッパリにお
いて、ロッドにバーサタイル性能が要求されるのは当然ですが、昨今の激タフな釣りの状
況では、当たり前の万能さでは太刀打ちできません。


そこに着目したのが川村氏。まさに「必要は発明の母」で、氏の釣行スタイルと最新の
釣り環境がこのロッドを生み出したのです。


「『一本で MH~H で行うすべての釣りをこなしてくれるロッド』を追求して開発をスタ
ートさせたのですが、欲張り過ぎて 1 年ほど発表が遅れてしまいました。でも今年、テレ
ビや雑誌の取材などで実戦に投入して予想以上の活躍をしてくれました」


発売から半年が経過したいま、キングバイパーをメインロッドとして釣行してきた川村
氏はいままでの釣りを振り返り、確かな手ごたえを感じているようでした。


川村氏はあらためて分析します。
「昨今のバスフィッシングはますます難しいものになりました。オカッパリはもちろん、
レンタルボートの釣りも盛り上がって来ただけに、プレッシャーは高くなりました。そう
なると釣りは自ずとフィネスな方向に向かいますが、釣り人のレベルも上がっていますの
で、フィネスでも当たり前の釣りでは釣れません。ですから違う攻め方が有効になるので
す。
例えばフロッグやビッグベイトなどの強い釣りも必要になってきます。そうした釣りは
これまで、専用ロッドで行ってきましたが、オカッパリでは何本もロッドを持ち歩くこと
はできません。
そこにキングバイパーが生まれた背景があるのです」


オカッパリロッド=汎用性という構図は従来からありましたが、川村氏が考える汎用性はレベルを超えていました。例えばラバージグですと、6g 程度のスモラバと呼んでもいいサ
イズから 1/2oz 程度の普通のジグまで使用範囲に収め、高比重ワームのノーシンカーからマ
グナムクランク、果てはビッグベイトまで使えるロッドを目指したのです。
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キングパイパーを曲げて見せる川村氏

「竿を鋭角に曲げると穂先に集中負荷がかかり、折れやすい状態になりますので真似をしないで下さい。」


●実は無謀ともいえる試みだった
川村氏は語ります。
「カバーフィッシングを例にとれば、10 年前と今とでは全然状況が違います。昔はシー
クレットなスポットにジグを上手く入れることができれば釣れました。ですが今はシーク
レットスポットなどありません。カバーの中ですら魚は警戒しています。そうなると、食
わせ要素の強い小さなジグを入れなければならないのです。カバーを釣るわけですからロ
ッドとラインはヘビーなものでなければならない。でもその先に付けるものは軽く小さな
ものでなければならないのです。
ちなみに近年、ベイトフィネスという概念が浸透して以来、カバージグは昔ほど使われ
なくなったようですが、実は王道を行くルアーだと思います。実際にここ数年、デカバス
をもっとも釣っているのは、ジグ&ポークによるものです。
ジグはトレーラーとの組み合わせで、フィネスからバルキーなものまで自在に調整でき
るところが優れています。
そんなルアーを効果的に使うためにも、さまざまなサイズに一本で対応できるロッドが
求められたのです」


7 月に放映された五三川での「ザ・フィッシング」で川村氏がメインに使ったのはカバー
ジグ SS6g に 3 インチのスティーズ・ホグを組み合わせたものでした。ほぼスモラバといっ
てもいいコンパクトなルアーです。これにラインがスティーズフロロの 16lb でしたから、
一見ミスマッチに思えますが、それを苦もなくあしらってしまうのがキングバイパーなの
です。


ですが、Easier said than done 。言うのは簡単ですが、そうしたロッドは一朝一夕には
できません。なんたってスモラバと 160g のビッグベイトを両方投げられるなんて、そりゃ
無理やろ、と思われるほど無謀な試みだったといえましょう。


「このロッドを開発する上で、軽さは絶対でした。重いロッドですと、水中のルアーの
状態を把握しにくい。軽いルアーを扱うには軽いロッドの方がいいのは当然です。それは
感度のよさにもつながります。

その上で、しなやかに曲がってくれることも必要です。軽いルアーをピッチングやスキ
ッピングで低い弾道で投げるには、棒のように固いロッドですと弾き出してくれません。
そうなると力で押すようになりますので、アキュラシーは落ちるし疲れます。
パラボリックに曲がってくれるということは、折れない強さ(粘り)、そしてクッション性にもつながります。
たとえば伸びない PE ラインを使ったパンチング、ビッグベイト、フロッグなどの釣りでも
その柔軟性が操作を簡単にしてくれます。ですがビッグベイトを使っても『まあ使って使
えなくもない』といった程度ではなく、専用ロッドといってもいいほど余裕を持って使え
るレベルです」


●高弾性素材×スローテーパーという意表を衝いた発想
軽さと感度は絶対で、その上で強さとクッション性を持つロッド、つまりキングバイパ
ーは偉大なる矛盾を解決したロッドといえるのです。
軽さと感度は高弾性 ・超高密度カーボンSVF ナノプラス素材を使うことで解決できるとして、よく曲がるこ
と、つまりクッション性を持たせる問題はどう解決したらいいのでしょうか。
前述のビッグベイトなどは、ロッドの乗りの良さが求められます。高弾性のロッドには
向いていない要素です。


高弾性ロッドには向いていない釣りもできる高弾性ロッド......?


それを解決したのが「スローテーパー」なのです。高弾性素材を採用したスローテーパ
ーという発想は盲点といえ、まさにコロンブスの卵。だから軽く、感度もいいロッドでも
しなやかに曲がり、クッション性も粘り感もある。キングバイパーは負荷に応じてどこま
でも曲がります。川村氏はこれを「曲りに終わりがない」と表現しています。
それが一本であらゆるシチュエーションに対応できる秘密なのです。川村氏もその常識
を超えたバーサタイル性能は「使ってもらえばすぐに納得してもらえる」と太鼓判を押し
ています。
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バット部分を曲げて見せる川村氏。真似をしてはいけません。 


●ロッド全体で掛けてくれる
ただし、スローテーパーですと、フッキングが甘くなるのではないか、という不安があ
りました。その問題に関してヒントになったのが、STZ661MFB-SV(ウェアウルフ)。川村氏は
「ファストテーパー表示のこのロッドですが、実は、低負荷ではファスト、高負荷ではパラボリックに曲がる。それでもガード付きのスモラバやフックポイントを埋め込んだスナッグレスネコなども完璧
にフッキングできます。SVFコンパイル X の反発力のおかげです。キングバイパーも高弾性素
材のおかけで、スローテーパーのロッド全体の反発力で魚を掛けてくれます。ですから魚
を掛けることに関してもまったく問題ありません。実際に魚を掛けた瞬間の写真を見せて
もらったのですが、見事にロッド全体が機能してフッキングしていました」
こうして完成に漕ぎつけたのが 105g のキングバイパー。「ヘビーパワーのロッドでこれ
だけ軽いのも珍しいでしょう。片手で楽に振ることができます。バット部分に 3DX が投入
されているので、ビッグベイトも楽に飛ばしてくれます」と川村氏はキャスタビリティー
に自信を持っています。
「フロッグ使いのアングラーからも評価されました。意外と繊細さが要求されるフロッ
グゲームにおいては、重いロッドですと慣性が働いて操作しにくい面があるようですが、
キングバイパーのような軽いロッドだとこまかなアクションを付けやすいというのです」
とも川村氏は付け加えてくれました。
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「ロッド全体で魚を掛けてくれるので、フッキングもまったく問題ありません」 

「竿を鋭角に曲げると穂先に集中負荷がかかり、折れやすい状態になりますので真似をしないで下さい。」


「発売後半年経過しましたが、そのパフォーマンスに関しては満足しています。実際に、
私の釣りでもたいへん重宝しています。これまでになかったタイプのロッドで、自分でい
うのもおかしいんですが、名竿といってもいいと思います。このロッドができたのも
DAIWAの技術力の賜物だといえるでしょう」


川村氏はこうまとめて、取材に出かけていきました。キングバイパーを引っ提げて......。


特集2
赤羽修弥・平川皓也チーム
W.B.S.オープンで 3 位入賞!


9 月 22、23 の両日、土浦新港を起点に W.B.S.オープンが行われ、赤羽修弥・平川皓也チ
ームは二日間トータル 9595g で見事に 3 位に入賞いたしました。
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オープン戦は 3 位までが表彰されました


このトーナメントは「オープン」と謳われているように、組織の枠を超えた選手が各方面から参加してくるユニークなもの。今年は各界から 26 チームがチャレンジしました。
折しも台風 24 号が関東に近づいており開催が危ぶまれましたが、なんとか無事に二日間
実施されました。
参加チームは思い思いのチーム名を付けて出場したのですが、赤羽チームの名前は
「TEAM TATULA」。この名の下に二日間ほぼ雨の中、二人で協力してゲームを展開しまし
た。
周囲を「アッ」といわせたのが初日の 5930g というトップウェイトと 2115g というビッ
グフィッシュ。小規模流入河川で平川選手が釣ったものですが、ギャラリーの度肝を抜い
ていました。
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初日のビッグフィッシュはデカかったですよ


二日目はややウェイトダウンして、それで 3 位に終わってしまったわけですが、TEAM
TATULA のチームワークを大いにアピールしたオープン戦でした。
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二日目の雨はものすごかったですが、DAIWA のレインギヤーが活躍したようです