Ultimate 12月11日号

特集

STEEZは一日にして成らず

オールスターという大舞台が生み出した名竿

●空前にして恐らく絶後の偉業・三連覇を成し遂げた赤羽修弥選手

 例年、晩秋から初冬に行われるバスのビッグイベントとして周知されていたのがバサー・オールスタークラシック(以下オールスター)。2019年大会は台風の影響で今年の春に延期され、おまけにコロナに災いされて無観客試合になってしまいました。

ですが、北大祐選手がイグジストとセルテートを賢く使い分け、3度目の優勝を果たしたことは鮮明に記憶に残っています。その模様はこのコラムでも紹介させていただきました。

http://daiwa-column.com/column/ultimate/2020/04/ultimate-410-1.html

 それでもオールスターは今でも秋から冬のイベントという印象が強いのも確かです。ですからこの時期になると、どうしてもオールスターが思い起こされます。

 中でも赤羽修弥プロが三連覇した2008年9年10年の模様はひときわ鮮烈です。3回勝っている選手は数名いるオールスターですが、3連覇はだれもいません。恐らく今後も可能性は限りなく低いでしょう。

 とくに3勝目を挙げた2010年大会は土浦新港で行われた最後のオールスターということもあって、一番強く印象に残っています。

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赤羽選手は3年連続でBASSER誌のオールスター特集号の表紙を飾りました

3連覇を振り返る

 それでは赤羽選手の3連覇をザックリ振り返ってみましょう。

 2008年の10月25、26日に行われた第22回オールスターで赤羽選手は二日間とも霞ケ浦本湖・西浦をメインに釣りを展開、前日の大雨で大増水した中、シャローを徹底して撃ち切り、初日5本3960gで2位スタート、二日目も西浦で苦しみながらも3本2350gを釣り切り、初優勝を遂げました。トータル8本の魚をノーミスでキャッチしたことが優勝につながりました。

 最近の霞ヶ浦もあまり釣れませんが、こうして約10年前の結果を見ても、当時の釣況もかなり厳しかったことが分かります。

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初優勝時の赤羽選手。さすがに若い! (Photo:BASSER)

 第23回大会は2009年10月31日と11月1日の両日に行われ、桜川をメインに釣り込んだ赤羽選手は初日5本5360gでトップ発進。ですが二日目は釣れない時間が長く、地獄の苦しみに襲われましたがなんとか5本3340gを持ち込み2連覇を達成しました。

 赤羽選手は前週に行われたW.B.S.クラシックにも勝っていましたが、その際のウィニングエリア=玉造を朝一番に行ってすぐに見切ったことが勝因と語っていました。

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オールスター名物、夕闇迫るファイナルウェイインです(Photo:BASSER)

 3連覇目の2010年第24回大会は11月6日、7日の両日に行われました。この年もメインは桜川。初日は5本3570gで4位発進でしたが二日目に5本4920gという桜川ではMAXと思われるビッグウェイトをマークして、妙技水道で釣り切った川口直人選手を振り切って優勝しました。

 川口選手は「二日目に5kg近く釣ってこられてはかないません。マイリマシタ」と試合後に語っていました。

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準優勝の川口直人選手に「参りました」といわせた3連覇の赤羽選手(Photo:BASSER)

 こうして赤羽選手はオールスター3連覇という偉業を成し遂げたわけですが、そこには赤羽選手の釣りを下支えしたタックルが存在していました。そしてそれらのタックルは実戦で鍛え上げられ、徐々に研ぎ澄まされたものに進化していきました。つまり、プロとDAIWAの技術陣の間では、オールスターなどのトーナメントを介して真の製品開発が繰り広げられていたのです。

●各試合のタックルストーリー

 2008年 08ハスラー

 増水のシャローカバー撃ちに赤羽選手が二日間とも採用したロッドはスティーズ701HMHXB-XTQハスラー、いわゆる08ハスラーです。赤羽選手も開発に関与した究極の5gテキサススペシャルともいえるロッドで、ノーミスの勝利に貢献しました。

 パワーはHMHというようにヘビーとミディアムヘビーの中間で、テーパーはエクストラファストに近い赤羽選手好みの掛け調子です。「魚を掛けても獲れなければ意味がない」というのが赤羽選手の持論で、フッキングした時にベリーで止まってくれ、ストレートフックを魚の上アゴに確実に貫通させてくれるパワーとアクションを持っています。 

 ちなみにリールはスティーズ103H、ラインがTDライン・アデスの14lbでした。

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ウィニングタックルの08ハスラーなどが紹介されたBASSER誌

 2009年 バトラーリミテッド・ハインド、スティーズブリッツ

 桜川で揃え、本湖で入れ替えるという作戦を見事にハメたのがこれら2本のロッド。橋脚周りの沈み物をライトリグ(ネコリグ)で丁寧に攻めるために赤羽選手が導入したのが03バトラーリミテッド・ハインド=631MLRB-03にリベルトピクシー、いわゆるベイトフィネスシステムです。

当時はその釣りにジャストのロッドがなかったために、赤羽選手はすでに製造中止になっていた03バトラーリミテッドのハインドを指名。当時、巻き物用のロッドとしてリリースされましたが、赤羽選手は「SVFコンパイルXのこれなら軽いリグにも使える」とその能力を見抜いたのです。この選択が後に優れたロッドに大化けすることは誰も予見できませんでした。

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桜川でのベイトフィネスの釣りに赤羽選手が指名したのはバトラーリミテッド・ハインド=631MLRB-03にリベルトピクシーでした

 桜川で揃えた後、本湖の石田でシャッドを駆使してキロアップを獲リ、ウェイトアップを果たしたのはスティーズブリッツSTZ651MLRB。軽量ルアーも使えるクランキングロッドです。

 2010年 スカイレイ(プロト)

 2010年も主戦場は桜川でしたが、前年が橋脚周りの沈み物が狙い目だったのに対して、この年はブレイクがらみの沈み物。テキサスでは根掛かりするしノーシンカーでは流される、スピニングタックルでは巻かれてしまう、ということでミスなく魚を獲るために赤羽選手が選んだのが8lbラインを使ってのベイトフィネスでした。

 ロッドは前年使用したバトラーリミテッド・ハインドをベースにネコリグの操作性に特化して作り上げられたスカイレイ(最終プロト)。軽いネコリグを立て捌きで繊細にズル引きすることができ、巻かれても待っていれば浮いてくる、ほどよいパワーを持っています。

 「カバー内で掛けたバスを引き出せるラインの太さとロッドのパワーバランスが合っているから魚を獲れるわけです」と赤羽選手。

 ちなみにこの年、ネコリグにはブラックレーベルPF6101LRB(プロト)とスカイレイ(63プロト)の2タイプを使いましたが、沖のカバーをフリップで撃つのがブラックレーベル、オダなどの沈み物を撃つのがスカイレイという使い分けでした。

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スカイレイのプロトはスティーズ63(プロト)として紹介されました

●そして最新のタックルへと続く

 こうして赤羽選手は3年間、それぞれのタックルを適材適所で駆使してオールスター3連覇という偉業を成し遂げたわけですが、それらのタックルはその後も着実に進化を重ねてきました。最先端素材の誕生、テクノロジーの進化がそれを助けたのです。 

08ハスラーは17ハスラーに

 2008年のオールスター初優勝の立役者となったハスラーは2017年、SVFナノプラスという新素材と3DXを身にまとい、現行の17ハスラー701MH/HFBとして生まれ変わりました。パワーアップされたことで、使用リグも5gから9g程度まで対応する幅の広がりを実現し、X45,3DXなどのテクノロジーも搭載される事でキャストアキュラシーが向上しました。 

03バトラーリミテッド・ハインド→→→STEEZスカイレイ→→→RD(レーシングデザイン)

 2009年に赤羽選手がバトラーリミテッド・ハインドを駆使してネコリグを炸裂させて優勝し、その翌年はそれをもとに作られたスカイレイのプロトで3連覇を達成。翌年にはスカイレイが市販されました。 

 そのスカイレイは2018年、超高弾性SVFコンバイルXナノプラス、次世代『AGS』、X45,3DX、エアセンサーシートなどが導入され、軽さ、感度、パワーなどの要素がすべてブラッシュアップされたRD(レーシングデザイン)631MLFBへと昇華しました。

 こうした卓越した数々の新製品も、元をたどればオールスターに行きつくわけです。

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(上から)2010年のウィニングロッド・スカイレイ(プロト)、翌年に発売されたスカイレイ、RD(631MLFB)

 赤羽選手はこう語ります。

 「考えてみれば2009年のオールスターでバトラーリミテットのハインドに着目したのがキッカケでスカイレイが誕生し、それがレーシングデザインにつながりました。

このロッドの出現で細いライン、軽いルアーを使う釣りがさらに研ぎ澄まされました。

抜群なのは感度で、ラインスラックを出した時でもアタリを感じられるほどです。それはライトリグの釣りにおいては想像以上に有難いことです。そして悪天候時、雨や風の中での釣りにおいては、釣りに集中させてくれる軽さと感度は絶対です。

つまり条件が悪くなればなるほど違いが出て来るわけですね。通常の条件ならスカイレイで十分ですが、過酷な中ではレーシングデザインの有難味が理解されます。要するにベイトフィネスの釣りを極めたロッドといえ、アングラーを新たなる領域へと誘ってくれるでしょう」

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プロトのスカイレイ、市販モデルのスカイレイ、レーシングテザインを持つ赤羽プロ

 こうして今回は過去にオールスターが盛り上がっていた季節だったこともあり、赤羽選手の3連覇から作り上げられたSTEEZを特集しましたが、これはあくまでもDAIWAのモノ作りのひとつの例であり、他の選手との製品づくりの取り組みにおいてもまったく同様のことが言えます。いうまでもなく他のレーシングデザインにおいても、それぞれの開発ストーリーがあったわけです。 

DAIWAは常にプロとともに「勝てるタックル」を模索してきました。根底にある考え方は、トップカテゴリーのトーナメントなど、よりシビアな環境で違いを見せるタックルこそ真に価値のあるものだということ。それが一般アングラーの釣りに貢献することはいうまでもありません。 

ですが、そうしたタックルを生み出すことは一朝一夕では叶えられません。例えば赤羽選手がスカイレイのプロトで勝利してから数年の歳月を経てレーシングデザインに到達したように、優れたタックルの開発にはかなりの時間とたゆまぬ努力の継続が必要なのです。

STEEZは一日にして成らず。

DAIWAはこれからも一歩一歩着実に努力を積み重ねて研ぎ澄まされたタックルを開発してまいります。