Ultimate 12月25日号

特集1

山下兄弟物語

MIPMost impressive Player

今回が今年最後のアルティメット。ですから編集部では2020年のファイナルに相応しいテーマを検討してきましたが、満場一致で決まったのがJBマスターズで大活躍した山下一也、尚輝兄弟の特集。

なんたってJBマスターズの最終戦で弟・尚輝が優勝、そして兄の一也がA.O.Y.を獲得するという最高にドラマチックな幕切れを演じてくれたのですから当然です。苦しみながらも最後の最後まで諦めず、根性で魚を絞り出してビッグタイトルを獲得した二人の戦い振りはいまでも鮮明に記憶に残っています。

 というわけでアルティメットでは彼ら二人にMIP(Most impressive Player)の称号を与え、特集することにしました。

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マスターズ最終戦優勝、そしてA.O.Y.獲得はMIPに相応しい成績です

 

●二人の関係はバチバチ?

JBの兄弟プロといえば現在は藤田兄弟が有名ですが、山下兄弟はいまでは彼らにヒケをとらない存在感を持っています。

家族全員が釣り好きで、ご尊父もバス釣りを嗜む家庭に育った山下兄弟は、ごく自然の成り行きでトーナメントに出場するようになりました。山下家のトーナメントに対するサポート体制は万全で、二人は素晴らしい釣り環境に恵まれているといえましょう。

山下兄弟は2020年のJBマスターズでは同じ舞台で戦い、来年はトップ50でも共に参戦予定ということで、二人は言って見ればライバル同士。お互いに絶対に負けたくない相手ととらえています。

ですから周囲には「二人はバチバチの関係?」と思われているようですが、実は仲の良い間柄。兄の一也も「仲は良い方だと思います。喧嘩した記憶はありません」といいます。

ただしトーナメントとなると話は別で「プリプラに入る頃からは釣りの話は一切しない」と取り決めているようです。賢いですね。

一方、弟の尚輝は「トーナメントに出始めて何もわからない頃はいろいろ教えてもらい、とても頼りになりました。兄がいるだけで気持ちが楽でした。いまでも教わることは少なくありません」と兄の一也を立てています。なかなかいい関係です。

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二人は仲の良い兄弟ですが、トーナメントは別...だそうです

感動のA.O.Y.獲得ストーリー

 山下一也選手は11月に北浦で行われた第二戦(実質的に最終戦)で二日間1本1188gを持ち込みトータル17位。それが結果的にA.O.Y.につながったわけですが、そこには当然ドラマがありました。

 この写真をご覧ください。弟の尚輝選手が優勝のコールを受けた瞬間です。そしてもう一枚、別角度からの写真もあります。

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マスターズの優勝コールを受けた瞬間の山下尚輝選手

 尚輝選手が歓喜のポーズを決めている時、一也選手の表情は憮然としています。だからといって、これは尚輝選手の優勝を喜んでいないわけではありません。

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ガッツポーズの尚輝選手とは裏腹に憮然たる表情の一也選手

 実はこの時、まだA.O.Y.の発表前だったのです。誰がA.O.Y.なのか、誰も知らなかったのです。一也選手もまさか自分がA.O.Y.とはまったく考えてもいませんでした。

最終戦でA.O.Y.を奪取すべく渾身の戦いを見せた一也選手ですが、結果は前述のように二日間で1本1188g! 本人は「それじゃムリだ。A.O.Y.は獲れない」と落胆していたといいます。だから尚輝選手が優勝のコールを受けていた時も、落ち込んでいたのです。

 「あの時は自分の不甲斐なさに参っていました。だからあんな表情になってしまったのでしょう」

 しかし、結果はご存知の通り一也選手がA.O.Y.のビッグタイトルを射止めたのです。

●一也選手にA.O.Y.の栄冠を運んできたタックルは?

 山下一也選手は最終戦初日、鰐川の葦に入り2バイト! しかし両方ともバラしてしまいました。これで落胆した一也選手でしたが、二日目も同じスポットに入り、ノーシンカーを投入。なかなかバイトが獲れない中、粘りに粘ってついに1188gを釣り上げたのです。まさに奇跡の一本! 

 その時点で12時17分。そこで釣れた1188gが一也選手にJBマスターズのA.O.Y.という栄冠をもたらしたのです。最後まで諦めてはいけないという最高の見本です。 

 ちなみに一也選手が1188gを獲ったタックルは

●ロッド:スティーズ 701MH/HFB ハスラー

●リール:スティーズCT SV TW 700XHL (ギア比8.1:1)

●ライン:モンスターブレイブZ 14lb

●フック:スティーズワームフック SOS 2/0

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強豪ぞろいのマスターズでのA.O.Y.は真に価値のあるタイトルです

 「今年は試合ごとに違うタックルが活躍してくれましたが、やっぱりA.O.Y.をもたらしてくれた最終戦のタックルが一番印象に残っています。無事にランディングできたのはこのタックルのおかげだと感謝しています。こうしたタックルを初め、パルスボートさんや家族など、サポート体制は万全なので来年も精一杯頑張りたいと思います」

 一也選手は電話の向こうで元気にこう語ってくれました。

●尚輝選手の釣りを助けたタックルは?

 一方、最終戦で見事に優勝を遂げた尚輝選手も、今年の試合で活躍してくれたタックルを振り返ってくれました。

 とくに印象に残っていると語ってくれたのはロッドで

 スティーズ661MFB-SV(ウェアウルフ)とBLX SG 682MHXB-STを挙げてくれました。

 ・バレない信頼性が光る661MFB-SV(ウェアウルフ)

 まず661MFB-SV(ウェアウルフ)に関してはこう解説してくれました。

 「初戦の霞ケ浦戦で初日1本、二日目の2本、そして最終戦の初日に3本の魚を獲らせてくれたのがこのロッドです。すべてヘビダンに使ったのですが、とにかくバラさない安心感があります。レギュラー寄りのファストテーパーなので掛かってから魚をうまくあしらってくれます。この信頼性はバイトが少ない状況では特に頼りになります。せっかくのバイトを逃しては勝てませんからね。

 このロッドが大きな戦力になっている要素は操作性です。ほぼヘビダンのドック撃ちに使ったのですが、フリーに落としやすい。ボトムに着くまでラインを張りたくないわけです。張るとバイトはとれません。661MFB-SV(ウェアウルフ)はその状況を作ってくれるアクションを持っているのです。

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マスターズ第一戦の河口湖戦で尚輝選手を4位に入賞させた661MFB-SV(ウェアウルフ)

 ・ショートバイトをとれるBLX SG 682MHXB-ST

 もう一本のBLX SG 682MHXB-STに関してはこのように説明してくれました。

 「3戦目の河口湖戦と最終戦に大活躍してくれたのがこのロッドです。河口湖戦はウィードに10gのヘビダンを撃つ釣りだったんですが、MHパワー+ソリッドティップのおかげで、小さいアタリを拾え、初日に3本の魚を釣り3位に付けさせてくれました。

 最終戦で苦労した二日目、最後の最後に2本の魚を獲らせてくれ、優勝させてくれたのもこのロッドです。その時はフリーリグに使ったのですが、そのリグにもベストなパフォーマンスを持っています。全体的に先調子でティップに張りがあるんですが、ほどよく曲がってくれる。だからシェイクしている時の「フワッ」としたアタリも感知できるんです」

 今年の好調は主にこの2本に支えられたわけですが、スティーズCT SV TW 700XHL (ギア比8.1:1)という最高のリール、確実に魚を獲らせてくれたスティーズフロロtypeモンスタースティーズフロロtype-フィネスにも感謝したいと思います」

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尚輝選手が「今年とくに印象に残っている」と言及したタックル

 こうまとめてくれた尚輝選手ですが、

 「今年の好結果をもたらしてくれた別の要因は、最後の最後まで諦めずにキャストを続けたことだと思います。みんなが帰った後、藤田京弥選手しかいなくなっても、帰着ギリギリまで釣りを続けていました。ラスト一投で釣れたことも何度もありました。そういった喰らいつく気持ちで来年も頑張りたいと思います」

 と、来季への抱負を語っていました。

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バストーナメントの「プラチナ世代」の一人、山下尚輝選手の2021年の活躍に期待しましょう

 というわけでこれからの山下兄弟には目が離せませんね。

特集2

キモはラインスラック

島後英幸、スイムベイティングを語る

 琵琶湖でガイド活動に勤しみながら利根川で行われているTBCトーナメントに参戦している熱血アングラー・島後英幸が「これからの釣り」に一推しなのがスイムベイト。自身も琵琶湖で「バンクハッカースイマー」と「バンクハッカーヘッド」の組み合わせでビシバシ釣っています。発売は、2020年2月予定です。

 島後プロはこう語ります。

 「これからの時期、冷えてくるとボートでもオカッパリでも『バンクハッカースイマー』などのスイムベイトの釣りが効果的です。今回はそれに関して解説させてもらいますが、どんな釣りでもセッティングが大切です。

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これからの時期はスイムベイトが効果的。「バンクハッカースイマー」がいい仕事をしてくれます

まずはロッドです。

私はBLX SG 7011MHXB-FRをおススメします。フロッグロッドなんですが、スイムベイトの釣りにも最高に適していると思っています。スイムベイトに適しているロッドとは、それなりにティップに張りがあるファスト寄りのレギュラーテーパーだと思います。つまり曲がりすぎず少し曲がるというイメージです。

そういうロッドを使えば適度なラインスラックを作ってくれ、いい感じでスイムベイトをアクションさせることが出来ます。ルアーがラインテンションに影響されませんので、ナチュラルに動かせるわけです。

コツはロッドを水面と平行か少し上げて巻くこと。こうするとラインを見ながら巻くことができ、バイトもとれます。ラインが揺れたりしますので、それがバイトです。

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ロッドを水平か少し上げてリトリーブすること。こうしてラインスラックを目視しながら釣るとバイトを感知しやすくなります

かなりテクニカルな面白い釣りですが、BLX SG 7011MHXB-FRがスイムベイトに一番マッチしているのはその点だと思います。

もう一つのメリットはしっかりしたフッキングができるということ。バットからベリーにパワーがあるので、ごっついシングルフックでも確実にフッキングさせることが出来ます。

この釣りで注意していただきたいことはバイトがあっても慌ててアワセないこと。ミスバイトの場合もありますので、確実にロッドが入るまで巻き続けることが大切です。その点を注意していただければいい釣りが出来ると思いますよ。

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確実にロッドが入ってからアワせると、こんな感じでバンクハッカースイマーをバックリ丸呑みした魚が釣れます

 リールは今まではリョウガを使っていましたが、これからはジリオンSV TW 1000がオススメです。異次元の釣りができます」

 とわかりやすく解説してくれた島後プロ。今年はコロナの影響もあってイマイチやりにくい年のようでしたが、トーナメント大好き人間なので来年もいろいろ計画を立てているようです。期待しましょう!