Ultimate 2月26日号

特集

直人の懐剣(ふところがたな)

ハーミット&スカイボルト

鎬を削り合う時、違いがわかる

●時代が生んだ2021 STEEZロッド

 誕生以来15年目の今年、フルモデルチェンジを果たしたSTEEZロッド。キラ星のように輝く15アイテムは、すべてDAIWAロッド開発陣とテスターが精魂こめて創り上げた傑作と自負できるものです。

 STTEZロッドはそれぞれの時代に於ける釣り環境にタイムリーに即応するべく企画・開発されて来ましたが、2021モデルもそのコンセプトは変わらず、というか時代の一歩先を見据えて製作されました。

ですからすべてのアイテムにそのロッドが何故生まれたのか、何故その素材・製法・機能が必要なのかという明確な理由が存在します。

 アルティメットでは今後、それら2021モデルを随時深掘りして紹介させていただく予定ですが、最初に採り上げるのが川口直人プロ監修の2アイテム。

HERMIT.pngHERMIT

SKYBOLT.pngSKYBOLT

 STEEZ C64L-SV・ST HERMIT

STEEZ S65L+ -SV・SMT SKYBOLT

 これらのロッドも当然、今の時代になくてはならないロッドとして、生まれるべくして生まれて来たのです。

●釣れる人、釣れない人。

 その理由は日本に特有なバスフィッシング事情。限られた水域で釣りを競うスタイルは、釣り人の技術の向上、それを支える先鋭なタックルを要求してきました。 

 例えばトーナメント。トップカテゴリーの競技に於いては、初日、二日目、三日目と次第にエリアが絞られ、選手の密集を来します。そこには大船団が発生し、したがって狭いエリアで釣りを競うことになります。つまりはクワセ合戦です。当然、フィネスな釣りの精度が勝敗の分かれ目になります。要するに釣る人と釣れない人がいる。

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船団の中で釣り抜けるには、アングラーのスキルと図抜けた能力を持つタックルが必要になります(B.A.S.S.クラシックでの船団とそれを取り巻くギャラリー)

 

 オカッパリも例外ではありません。週末ともなれば人気スポットにはアングラーが並びます。そこでもクワセ合戦が繰り広げられるのです。

 そうなると微妙な誘いでバスにスィッチを入れるテクニック、微かなバイトを感じ取るアングラーの感性などが違いを産むことになります。同時に、そうした釣りを可能にするクワセに特化したタックルも必要になります。  

ベイトフィネスなどという概念が生まれたのも、そうした環境下での必然でした。

釣れる人と釣れない人の違いが生まれるのはそこです。つまり、他のロッドではできない誘い、他のロッドでは感知しえないバイトを伝えてくれるロッドが釣れる釣れないの差を生み出します。

 2021年、川口直人プロが監修した2アイテムも、そうした状況を最大限に反映して生まれました。

いずれもSTEEZフィネスロッドの系譜に新たな1ページを記すモデルといえます。

そういったわけで今回は現在は河口湖で悠々自適の川口プロに自身が監修したこれらの2アイテムについて語っていただきました。

「2月一杯に出来ることを済ませて、3月になったらJBトップ50の準備を始めるよ」という川口プロは気さくに取材に応じてくれました。

 川口プロはまず「ハーミット」について解説してくれました。

●むしろ操作性を感じるメガトップ

「これはね、2012年のハーミットのリファインモデルです。イメージ通りにできました。開発もスムースでした。長さもアクションも同じです。ですが、大きく変わったことがあります。

まずはブランク。SVF COMPIL-XにX45がフルシールドされたこと。おかげで感度とアクション、操作性が一変しました。2012年から9年後の刷新ですが、素材の進化を感じましたね。驚くほどです。

次にティップにメガトップが採用されたこと。2012ハーミットのティップは通常のソリッドでしたから革命的ですね。

ところでみなさん、メガトップのメリットとして感度を挙げます。確かにボトムの微妙な起伏を伝えてくれる感度は抜群で、実釣においては実に有難いんですが、僕はむしろ操作性を強調したいですね。ワームの移動距離を少なくして、細かく誘いたい時など、このティップがいい仕事をしてくれますよ。

動かせているんだけど、実は動かせたくない......そんな感じ、わかりますか? そういう操作ができるんです。それができないと食わない魚がいるのも事実です。渋い状況では実に頼りになります。

メガトップはキャストも決まりますね。ブレがない。まあ、これはX45なども貢献しているのでしょう。とにかく狙ったところにビシッと撃てる。これもトーナメントでは釣れる釣れないの差を生み出します。

そして意外に大きな進化がグリップ。これは他の2021スティーズロッドに共通している装備ですが、とにかく握りやすい。パーミングしていて隙間ができない。ロッドと指が密着するんです。だからキャストも楽だし飛距離も出る。そして感度も良くなる。これは画期的ですよ。リールシートは単にリールを固定するパーツではないことが理解されるでしょう。これもクワセ系の釣りには強力な武器になります。

2012のハーミットも当時としては画期的なロッドでしたが、これは数倍良くなっていますね。ワーム系の釣り全般、ノーシンカー、ジグヘット、ネコリグ、ダウンショットなどすべてのライトリグで活躍してくれると思います。厳しい試合では頼りになるでしょう」

そして川口プロは「スカイボルト」の解説に移りました。

●ラインがフケても違和感が出るSMT

 「このロッドの開発には少し苦労しました。スピニングロッドはつくづく難しいと感じました。

DSC01233.JPG

スカイボルトのフィールドテイトは再三にわたって行われました

 悩んだのはシェイクです。実は僕がスピニングロッドで行うシェイクには2通りあるんです。

 ・スラックシェイク=たるんだラインを揺らす大き目のシェイク

 ・マイクロピッチシェイク=ビビビっと細かく刻むシェイク。

 この二つです。

DSC01205.JPGたるんだラインを水中に送り込むスラックシェイク

DSC01207.JPG小刻みに刻むマイクロピッチシェイク

 従来はこれを別々のロッドでやっていたんです。つまりスラックシェイクは631UL/LFS-SMT=ファイヤーホークで、マイクロピッチシェイクは601UL/LXS-SMT=ファストホークで行っていました。

 2021スカイボルトはこれら二種類のシェイクをひとつのロッドでできるようにしたんですよ。ここが難しかったですね。

 結局、トップガイドをほんの少しだけ重くすることで、その問題が解決したんです。こういうと簡単に聞こえるでしょうが、そこに行きつくまでにはいろいろ試したのでかなり時間がかかりました。

 二通りのシェイクができるので、ノーシンカーはもちろん、ミドストもできるようになりました。

 これを可能にしてくれたのがやっぱりSMT=スーパーメタルトップでしょうね。金属特有の曲がり方をするので、非常にシェイクに向いています。そして感度もいい。

 SVF COMPILE-XとSMTの組み合わせは最高ですよ。これ以上ない感度で、まさに超高感度です。

 バスがワームをくわえて反転すればどんなロッドでもそのバイトを感じることができますが、ラインが弛んでいる時のバイトは通常のロッドでは分かりません。でもSMTなら感じることができるんです。

DSC01211.JPGラインが弛んでいる時のバイトも感じることが出来る、それがSMTです

 ただし違和感でしかありません。僕はそれにアワセます。「コツン」と来るバイトではないので一般の人にはなかなか分からないんですが、SMTで釣り込んだ僕には分かるんです。

 桧原湖あたりでガイドをしていると、ゲストさんはほぼワームを飲まれる。使用ワームが2から3インチ程度の小さなワームですと、バスが吸い込んだ瞬間に吐き出さない限りノドの奥まで入りこんでしまいます。そうするとそこでハリが掛かって容易に外せません。2lbから2.5lbのライトラインへのダメージも小さくありません。

でも僕はまず飲まれない。バイトがわかるからです。だから上アゴのセンターにフッキングできる。SMTだからです。トーナメントで飲まれたワームを丁寧に外すのは時間のロスですし、何より魚を傷めてしまう危険性があります。だから飲まれることは最悪なのです。

 ラインはフケている。しかもワームとの距離は長い。それでもバイトを感じることが出来る。これは試合では大きいですよ。

 バスがワームを吸い込んでも気が付かない。そして瞬時に吐き出されてしまう。そんな、他のアングラーがまったく気づかないバイトを感じることができる。それは何を意味するのか? そうです。他の人に釣れないバスが釣れるのです。

 船団の中でも釣り抜けることが出来るでしょう。ますます厳しくなるコンディションを制するには、ハーミットやスカイボルトのようなロッドが必要なんですよね」

 とまとめてくれました。まさにこれら2本のロッドは川口プロの懐剣。プロ同士が鎬を削る勝負の世界で必ず結果を出してくれるでしょう。

 いうまでもなく、オカッパリでもとくに混雑したエリアやタフった時には違いを見せつけるでしょう。発売をお楽しみに。