特集
タトゥーラと共に闘う男、
島後英幸のトーナメントライフ。
10月6日、利根川で行われたTBCトーナメント第3戦で、DAIWAチームの島後英幸プロは今年の試合日程を終えました。これで2年間のTBC参戦が終了したわけです。
第3戦が最終戦となったのは、7月に行われる予定だった試合が台風の為に延期されたためです。
その前の試合・第5戦が行われたのが9月29日。従って一週置いた6日に事実上の最終戦が行われたというわけです。
これが島後プロのボート。「利根川のタトゥーラ使い」といわれているのも理解できます
そのスケジュールは琵琶湖からTBCに参戦している島後選手にとっては過酷なもの。同選手は琵琶湖往復のロスを考慮して迷わず利根川滞在を決めました。
第5戦のプラ初日が9月26日、そこから試合を挟んで10月6日まで、トータル11間連続で利根川に滞在したのです。しかも車中泊。そして川に浮かび続けました。凪の日ばかりではありません。荒れた日も雨の日もロッドを振り続けたのです。同プロのハングリーさが伺える事実です。
島後プロは11日間利根川に滞在して川に浮かんでいました
なぜそこまでして利根川にこだわるのか?
「それはアングラーとして私を成長させてくれるからです。慣れた琵琶湖と違い、利根川では浮かぶ度に新しい発見があります。バス釣りがどんどん楽しくなるんです」
島後プロはこう語ります。将来的にはW.B.S.参戦も視野に入れているようですが、現在は「石の上にも3年」のことわざ通り、最低でももう1年は頑張るようです。
10月6日の試合は3本2734gで11位。2年目とはいえ利根川はアウェイの選手にとっては悪くない結果といえます。
「プラクティスは無駄ではありませんでした。エリアは当初のプラン通り上流です。試合当日は少し修正も加えて巻きより打ちに絞ってテキサスとノーシンカーで釣り切りました。ミスもあったんですが、今後の課題として取り組んでいきます」。
10月6日夕方、島後プロは片付けを行いながらこう振り返ってくれました。知らないことだらけの利根川の状況も徐々に分かって来たようです。「もう少し利根川のことをよく知りたい」......そう語る島後プロの気持ちも分かります。
今回のアルティメットでは、10月1日、そんな島後プロのプラに同船して釣りを見せてもらい、様々なお話を伺ってきました。
一人黙々とボートを降ろす。孤独な作業ですが、アングラーとしての上昇志向がある限り、苦にはなりません
島後プロは9月29日の試合が終わった後、優勝者のパターンと自分のパターンを確認するために翌30日から利根川に浮いたと言います。いわゆる反省フィッシングです。「負けた試合から学ぶことは多い」と10月1日も同じような流れでボートを出しました。
優勝者のパターンはスイムジグとジャークベイト。一方、島後プロのパターンはやはりスイムジグとシャッドテールのノーシンカー、そしてスティーズホッグのテキサスリグでした。
試合翌日は5本5kgオーバーを叩き出し、自分のプランが間違っていなかったことを確認できましたが「反省点としては人が多すぎた有望スポットで釣り方を絞り過ぎ、ミスも出てしまいました。釣りの幅がなかったことがわかりました。お立ち台の可能性もあっただけに残念です」
この悔しさが島後プロを練習にかきたてるのでしょう。
第5戦の翌日の反省フィッシングではスティーズ・カバーチャターなどで5本5kg以上を叩き出しました
10月1日6時出船。スロープを出た島後プロはバウを上流に向けます。
「前回の試合では上流がキーになりました。次も同じだと思います。ですから今日ももう一度上流をチェックしてみます。さらにいいスポットを見つけることができればいいですけどね」
「負けた試合から学ぶことは少なくありません」と反復練習に明け暮れる島後プロ
こうして若草大橋の上のブッシュから釣り始めます。スイムジグをブッシュの奥にスキッピングで送り込みます。島後プロの釣りを近くで見るのは初めてでしたが、キャスティングのうまさには驚きました。左右両手投げでスキッピングをビシビシ決めます。利き腕は右手ということですが、左手投げも利き腕のようで違和感はまったくありません。ボートポジションと狙うスポットの位置関係で左右の手を使い分けます。
琵琶湖のオープンウォーターではこのテクニックは必要ないはずです。逆に、利根川ではこうした技術がないと釣りになりません。
島後プロのスキッピングテクニックは驚異的で、カバーの奥の奥、さらにその奥にルアーが滑り込んでいきます
「リールがいいからこうしたカバーにも入れることができるんですよ。タトゥーラならこうしたスキッピングも簡単です。軽いからブレも少ないです。SVだけでなくTWでも全然問題ないですよ。メカニカルも締めていません。それでスキッピングできるんですから、今のリールはすごいですねー」
次々にスキッピングを決めながら島後プロは語ってくれました。ボートのラッピングを見てもわかるように、島後プロはタトゥーラ愛に溢れています。
ちなみに島後プロはラッピングが傷つくのを恐れるあまり、ルアーがカバーにスタックしても、ボートを近づけずに外そうとさえします。
島後プロは完璧な両刀使い。右でも左でもまったく同じようにキャストします
ちなみにこの日、島後プロがメインに使ったタックルシステムは
●シャッドテール・ノーシンカー用
ROD:ブレイゾン641MB(ショートキャストでスポットに入れやすい)
REEL:タトゥーラSV TW RCS90mmハンドル
LINE:モンスターブレイブZ 16lb
●スイムジグ用
ROD:ブレイゾン661MHB(シングルフックのフッキング、カバーから抜き出す必要性を考慮してパワー重視でチョイス)
REEL:タトゥーラ TW 100H
LINE:モンスターブレイブZ 16lb
●テキサス用
ROD:ブレイゾン721HB(カバーの上からリグを落とし込むチョーチン釣りに向いた長さ)
REEL:タトゥーラ TW 100SH
LINE: モンスターブレイブZ 20lb
(上から)テキサスリグ用、ノーシンカー用、スイムジグ用
「今回はタトゥーラで勝ちたかったんですけどねー」
島後プロにとって、タトゥーラは頼れる武器です。全幅の信頼を寄せています。だからこそキャストの精度が出るのでしょう。
途中、ガストネードの70SもSV TWで投げましたが、気持ちよく飛んでいきます。一瞬、ロッドに重さが伝わりましたが、バレてしまいました。
タトゥーラなら5.5gのガストネード70sも気持ちよく飛んでいきますよ
島後プロは試合の反省をしながら利根川を釣り上がって行きましたが、小貝川との合流点を過ぎ「航路を知っている上限まで来ました。未開の地は楽しいですね」
と新しいエリアの開拓も忘れてはいません。そして下りながらエレキで水中堤防を確認。
「時間がかかりますけど、こうした行為も大切なプラの一つです」
こうして島後プロはところどころで魚の存在を確認しながらバイトだけをとって行き、太陽の光が斜めに射すようになった頃、ノーシンカーで軽く一本のナイスサイズを釣って見せてくれました。
「プラだからといってフックオフさせてばかりではつまらないでしょう」と終盤で釣って見せてくれたナイスバス
「今日は状況もずいぶん変わってタフでしたが、貴重な収穫を得ることができました。具体的に魚の存在を確認できたことが大きいですね。次の試合では流れと水位、そして水温かキーファクターとなるでしょう。川は冷たい水が一気に入って来ますからね」
こうして島後プロはロッドを置きました。そして10月5日の午前中までプラを続け、6日の試合を迎えたというわけです。
今回の同船取材では、釣果以上に島後プロのアングラーとしてのピュアな姿勢とハングリーな心意気に感銘を受けました。その努力は来期のTBCトーナメントで花開くことでしょう。
「石の上にも3年」。島後プロの利根川研究はさらに続きます
次号予告!
次号はトーナメント特集号として
JBトップ50最終戦
W.B.S.オープン
H-1グランプリ最終戦
をレポートいたします。お楽しみにっ!