Ultimate 4月10日号

特集

「偉業」をアシストした

イグジスト&セルテート

北大祐、オールスターV3の秘密

3度の優勝は「偉業」

 バサー・オールスタークラシック3度目の制覇。それは「偉業」と形容してもいささかも誇張ではではありません。いままで何名かのアングラーがこの実績を残していますが、(DAIWAチームの赤羽修弥プロもその一人)、年々タフさを増しつつある昨今のバストーナメントにおける3度の勝利は非常に価値あるものといえましょう。

 今年、そんな大仕事をやってのけたのがDAIWAチームの一人、北大祐選手。kita.JPG

オールスターに3度勝ったことがある『レジェンド』の仲間入りを果たしたのです。

 オールスターの歴史を振り返ってみると7尾リミットの時代から5尾リミット、そして最近の3尾リミットとレギュレーションが変って来ました。これは要するにトーナメントウォーターにおける個体数の減少を示しており、平たく言えば釣れなくなった挙句の変更です。それだけに3尾リミットでも勝つことの難しさは倍加したわけで、なおさら北選手の「偉業」がクローズアップされるといえます。

 とはいえ、北選手の勝利は必ずしも楽なものではありませんでした。2018年の同トーナメントで大外しした北選手ですが、3月に延期された今年のオールスターでも自信はまったくなかったといいます。

 「勝てたのは運が良かったからでしょう。それほど自信はありませんでした。確信が持てるスポットはなかったですしね。魚が入ってくるであろうエリアで粘るしかなかったんです」と北選手は試合後に語っていました。結果的にはそのプランが機能したのです。

 それでは北選手の二日間を振り返ってみましょう。

 北選手が具体的に釣りを組み立てたエリアは北浦上流の矢幡、白浜、そして霞ケ浦本湖下流の境島でした。

「境島の方がサイズが良かったんですが、風などを考慮して北浦の白浜がメインエリアになりました」 

 初日は霞ケ浦本湖、そして流入河川組の爆裂ウェイトに機先を制された北選手ですが、それでも2尾1835gを持ち込みしぶとく4位スタート。

 10時ころから爆風が吹いた二日目は、プランどおり北浦・白浜をメインに終始好調な釣りを展開、3尾3855gをマークして見事逆転優勝を果たしたのです。

 北選手のウィニングエリアとなった北浦・白浜はこの時期の知る人ぞ知る定番スポット。プリスポーンのタイミンクで魚が差してくるハードボトムにシラウオがリンクすると爆発するポテンシャルを持っています。ですが、みんなが知っているということは釣りはイージーではないということ。このエリアもご多分に漏れず、普通のことをしていては釣れないという状況になっていました。

 それゆえ、ここをメインエリアに指名したのは北選手の他にもう一名だけでした。スタート地点から近く、時間的なアドバンテージが約束されるにも関わらず、多くの選手がここを除外したのは「釣りが難し過ぎる」からだったのです。

 そこを北選手は攻略したのです。

 北選手の釣りは小型のミノーがメイン。ボトムに当たるか当たらないかというレンジをテロテロ引く釣りでした。使用したミノーは2種類。ボトムに軽くコンタクトさせてヒラを打たせるタイプと浅目を引くタイプを使い分けました。

●キモとなったイグジストとセルテートの使い分け

 ここでキモとなったのがリールの使い分け。いうまでもなくスピニングリールを使ったわけですが、スピニングなら何でもいいということではなく、そこには北選手ならではの緻密な計算があったのです。

 つまり、ボトムタッチするミノーに使用したのがイグジストLT2500-C

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 表層を引くミノーに使用したのがセルテートLT2500Sというように使い分けたのです)

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 「ボトムに当てるミノーの場合は、回転が極めて軽いイグジストを使いました。ボトムに当たった時にしっかり止まってくれるからです。

 もう一つのミノーはボトムに当てないで引くのでトルクフルに巻けるセルテートを使いました。仮にボトムタッチさせるミノーをセルテートで引くと、根掛かりしやすくなってしまいます。

 いずれにせよ、そのリトリーブのタッチはとても繊細で、日によっても全然違いました。イメージとしては管釣りトラウトのスプーニングと同じです」

 北選手はこうも語ってくれました。

 ちなみにラインは、メインがPE0.8号と0.7号。表層を引くミノーは0.7号、ボトムにタッチさせるミノーを使う時には0.8号と使い分け、リーダーはフロロ7lbとのこと。

「ドラグはゆるゆるで。魚が走って反転してようやくフッキングできた感じです。乗らないバイト、いわゆる甘噛みは何回もありました。食いが浅かったんでしょうね。でも魚が掛かってロッドに負荷がかかってからはバラしたことはありませんでした。とりあえずロッドを曲げてからアワセる、これが大事でした。

だからバイトを察知させてくれるリトリーブのタッチがとても大切で、ルアーに応じたリールの使い分けが奏功したと言えます」

北選手はこうまとめてくれました。

この辺の状況は動画でもUPされていたので、リトリーブからバイト、そしてスウィープにフッキングする様、ファイトしてからハンドランディングにいたるまでの様子をライブでご覧なった方も多いでしょう。 

適材適所という言葉はスピニングリールにも当てはまり、それを十分に理解していた北選手だから難解な春の魚を獲ることができたのでしょう。

その勝ち方はまさに「偉業」と呼ぶに相応しいものでした。