特集
泉和摩が語る
ラバージグの真髄
●実はラバージグの大家
今回のお題はラバージグ。語り部は泉和摩プロ。9月24日に東京・小平市のHMKL事務所にお邪魔し、取材をさせていただきました。泉プロはその直前の9月22日、NHC(日本へらぶなクラブ)主催のヘラブナ釣りのトーナメントで準優勝したばかり。その疲れも見せずにお時間を割いてくれました。
泉和摩プロといえばHMKLブランドの生みの親。それゆえミノーの大家と思われていますが、それだけではありません。氏の薀蓄が生んだルアーはいまではあらゆるジャンルに広がりを見せています。
そんな泉プロが
......ルアーを一つしか使えない場合、何を選ぶか?
と問われた時には迷わず以下のように答えます。
「それはラバージグしかないでしょう」
意外なようですが、トーナメントでもプライベートでも、釣り場に一つしかルアーを持って行けないとしたら、ラバージグを選ぶというのです。
何故ラバージグなのか? その秘密を明かしたのが今回の特集です。
実は泉プロはラバージグに関する造詣も非常に深いものがあるのです。それは氏の50年にもわたるバスフィッシングのキャリアから培われたもので、アメリカのトーナメントにチャレンジした経験なども礎になっています。
●JB桧原湖で8位入賞
そもそもラバージグは......と、本題に入る前に泉プロは9月6日に行われたJB桧原湖第三戦で3本2239gを持ち帰り、8位に入賞したことをレポートしておきます。
泉プロは準優勝者と3位の選手の間で釣りをしていたようですが、彼らが二人ともキャロで釣りをしていたのに対し、泉プロはリーダー1メートルのダウンショット。
「魚はたくさんいるけど釣れない」という状況の中で、タックルトータルのポテンシャルを駆使して粒揃いのキーパーを揃えました。
そのタックルというのが
ROD: BLX SG 681ULFS
REEL:スティーズ Type Ⅱ
LINE:スティーズ フロロ2.5lb
HOOK:スティーズワームフックSS FFN ♯6
SINKER: バザーズワームシンカーTG フック 1/8oz
というもの。
JB桧原湖8位入賞のタックル
「長いリーダーを扱いやすい6フィート8インチのロッドはしなやかでライトリグに繊細に対応してくれ、掛かってからのパワーも信頼性十分でした。2.5lbラインでのやりとりもリールのドラグが素晴らしく機能してくれました」
と泉プロは解説してくれました。
JB桧原湖シリーズは10月25日に最終戦が予定されています。
「恐らく渋い試合になるでしょう。だからこそ面白いといえます。ンフフ」
と泉プロは楽しみにしているようでした。期待しましょう。
●なぜラバージグなのか?
それでは本題に入りましょう。ルアーを一つ選ぶとしたらラバージグ。泉プロは何故そう断言するのか、それは......ご本人に語っていただきましょう。
「まず場所を選ばないことです。ボトムでも表層でも、カバーでもオープンウォーターでも、どんなところでも使えます。使い方も幅広く、撃っても巻いてもOKです。そういうルアーは他にありません。だから一つといわれた時にはラバージグを指名するのです。
ラバージグは場所を選ばない......W.B.S.第二戦で桜川河口をスティーズフィネスジグで丁寧に釣る赤羽プロ
そして他のルアーと決定的に違う能力があるからです。それは水の中でスカートがフレアーして自在にカタチを変えること。自分で姿を変える芸当はラバージグにしかできません。それが魚にアピールするわけです。
ラバージグがいつ頃この世に生まれたのか詳しくは知りませんが、いままで使われ続けてきた理由はそこにあると思います。重いものがドンとボトムに落ちてスカートがフワッと膨らむ。それに魚がリアクション的にバイトする。昔はテキサスリグでもいいじゃないか、という人もいましたが、自分で姿を変えることができるのはラバージグしかありませんからね」
泉プロはここまで一気に語ってくれました。
モノの本によると、ジグヘッドにラバーを巻きつけたラバージグが生まれたのは1930年代のこと。爆発的人気となりすぐにパテントをとったといいますから、その威力や推して知るべしです。
そんなラバージグを泉プロはかなり昔から他のアングラーに先駆けて使っていたようです。
「釣りを始めた頃からすでに使っていました。ラバージグで有名な林圭一プロより早く使っていたんじゃないかな。池原ダムなどは当時からタフな釣り場でしたが、1/2ozのラバージグにカーリーテールのワームを付けて中流域の立木などを攻めれば、よく釣れたことを覚えています。
河口湖ではウィードエリアをキャスティングでラバージグを使っていました。そういう釣り方をしていた人はいなかったんじゃないかな? 数は釣れた河口湖でしたが、ラバージグはデカイのが釣れたんです。気難しい魚にも口を使わせることができるルアーでした。
林プロがフリッピングを紹介したのはその頃のことです。
当時はスタンレーやウェポンジグなど、輸入物がほとんどでした。
1986年に当時のJBTAのA.O.Y.になり、翌年からアメリカに行きました。当時はフロリダあたりの試合でもラバージグを使う人はほぼ誰もいなかったですね。
(この辺のストリーはW.B.S.のコラム「いつかはアメリカ」No.4,No.5 https://www.wbs1.jp/someday/12937/に詳しく書かれています)
そんな無敵なラバージグですが、問題がないわけではありません」
●フレックスジグが生まれた理由
泉プロはここでトーンを変えて解説を続けました。
「ラバージグは根掛かりしにくいとはいっても、100%ではありません。しばしば根掛かりはします。そしてヘッドサイズとフックサイズを自在に選べないことも課題の一つでした。このヘッドでもう少しフックが大きければ......逆にこのヘッドでもう少し小さいフックだったらという、ないものねだりがあったのです。
スティーズフレックスジグは画期的なラバージグです
それを解決したのが変幻自在にフックを交換できるスティーズフレックスジグなのです。
スプリットリングを介してフックをジョイントできるタイプはあったんですが、フックが寝てしまう。その点、フレックスジグは直結できるのでフックポイントが常に上を向くんです。つまり倒れない。
だからほとんど根掛かりしない。これはフックサイズを選べること以上に強力な武器になります。ガード付の大きなマスバリを使えばポークも付けられます。だからワームが使えないところもOK。通常のラバージグでもポークを付けられますが、根掛かりするのでウィードを攻められません。
とにかくこのフレックスジグのウィードレス性能は最強だといえます。霞ケ浦・土浦の岸沿いによくある通称「タマネギ」でも根掛かりしません。ノーシンカーでさえ根掛かってしまうのに根掛からない。
こうした「タマネギ」を撃っても根掛かりの心配はほとんどない、それがスティーズフレックスジグ
一番の理由はフックが常に上を向いていることですが、偏平のヘッドも少なからず貢献しています。そっと置けますからね。そして気持ち上を向いていることもミソです。必ず正しい姿勢で落ちていきます。この角度もキモです。
気持ち上を向いたヘッド。この微妙な角度がキモです
そして半分ほど埋め込まれた横向きのアイも根掛かり回避に貢献しています。ラバージグの根掛りはこの部分に引っ掛かることが非常に多いのです。太いラインが作るノットは意外に大きな抵抗になるからです。こうした全ての要素が根掛り回避に貢献しているスティーズフレックスジグは、凄いジグだと思いますよ」
半ば埋め込まれた横向きのラインアイ。これも根掛かり回避に貢献しています
●補足
そして泉プロは親切にもラバージグの使い方に関して補足してくれました。
「スカートですが、これは短いほど早く落ち、長いほどゆっくり落ちます。フックより1cmほど長くするのが基本です。出荷時のまま使っている人が多いようですが、状況に応じて調整した方がいいでしょう。
スカートの量ですが、多ければゆっくり沈むし根掛かりも減ります。スモラバなどでスカートが多いとかなり沈みはゆっくりです。1/8oz程度でもものすごくゆっくりです。イライラしますが、それで釣れることもあるんですけどね。
ロッドは硬めを選ぶことが基準です。ラインも一番手太いし、小さなジグでも太いフックが付いていますからね」
こうしてラバージグの薀蓄からスティーズフレックスジグに導いてくれた泉プロ。さすがの解説力というしかありまぜん。というわけで秋の一日、スティーズフレックスジグだけで釣りをしてみるのも面白いかも知れません。
この秋、スティーズフレックスジグ縛りの釣りも面白いかも...