特集
帰着3分前のドラマ!!
室町雄一郎プロ、
JBマスターズ初戦で勝利の雄叫び
- コンディションは超絶タフ
3月19、20の2日間、茨城県の霞ヶ浦で開催されたJBマスターズ第1戦において、昨年からDAIWAチームに加わった室町雄一郎プロが堂々の優勝を遂げました。
同プロのマスターズにおける成績は2015年に野尻湖、2020年には同じ霞ヶ浦で優勝しており、これで3勝目。トップ50の選手も含めた強豪がひしめきあうマスターズにおいての3勝は偉大な結果といえましょう。
マスターズ3勝という偉業を成し遂げた室町プロ
今回はゲーム自体、非常に厳しいものでした。ただでさえブラックバスを釣ることが簡単でなくなったここ数年の霞ヶ浦ですが、春先はさらに難易度が高まり、オカッパリなら比較的手軽に釣れても、プレッシャーがかかる試合でキーパーを持ち返ることはかなり難しいと考えられています。
今回のマスターズにおいてもその状況は顕著で、初日に魚を持って来たのは107人中わずか19人、2日目は少し良くなったものの109人中26人という惨状。71名が2日間ともノーフィッシュに終わるという、超が付くほどのタフコンディションでした。
そんな中で室町プロは初日3本のリミットを達成、2日目も価値ある1本の魚を持ち込み、堂々の優勝に輝いたのです。
ウェイトは初日1,976gで単日2位、2日目は1,234gで単日7位、計3,210gという今の時期を考慮すると実に秀逸なものでした。
実は室町プロ、春先の霞ヶ浦は得意な季節で「自分の釣りスタイルに合っています」ので、ある程度の自信もあったようです。
それではゲーム内容を振り返ってみましょう。
- 冴え渡った「妙岐攻め」
春先の霞ヶ浦は得意という室町プロは初日、他の選手がのた打ち回って苦しむ中、意外と容易にリミットを達成しました。
今回の試合は2日間とも天候に恵まれ、エリアの移動や各スポットでの実釣行為などは極めて問題なく行えたようです。
メインパターンは2日間とも葦をテキサスリグで攻めるというもの。
「この時期に葦に入ってくる魚はフレッシュでコンディションも良く、リグを落として1アクションから2アクションで口を使う」と分析した室町プロは初日、最初の1本を根川で、2本目3本目を妙岐水道で獲りました。
結果的にこの妙岐水道が勝利の決め手となりました。比較的釣り人も少なかった初日は5gテキサスリグ+ホグ系ワームで順調に2本の魚を獲ったようです。
具体的なスポットは稲敷大橋に向かって右側の「妙岐ノ鼻」という出口に近いところ。定番と言えば定番ですが、それだけにレンタルボートアングラーなどに叩かれており、魚は非常にスレています。そこから2本の魚を引きずり出したのですから、室町プロはやっぱり春の霞に強いといえましょう。
堂々のリミットメイクで初日2位発進。サスガと周囲を唸らせました
- 「吐きそうになった」2日目
このように2位スタートという順調な滑り出しを見せた同プロですが、2日目は「一日中吐きそうでした」というほど苦しみました。
とりあえず北利根川をチェックしてから妙岐に向かうもそこはアングラー銀座。とても釣りになりません。それでもしばらくルアーを撃つもノーリアクション。そこで北利根に戻ってみれば水門開放の影響でダダ流れ。こちらも釣りどころではありません。
流れとしては非常に悪い感じでした。途方に暮れた室町プロが選択したエリアは、やっぱり妙岐水道。しかし、そこにはしたたかな作戦があったのです。
- 3分前、ドラマが起こった!
2日目の帰着時間は13時30分。北利根川のスローエリアを考慮すると妙岐水道からは40分は見なければなりません。
そうした状況で室町プロが考え付いた作戦は、残り10分に賭けるというもの。
人が多かった妙岐水道ですが、多くのアングラーは帰着に間に合わせるために12時40分にはエレキを上げます。すると人が去ると魚は急に口を使いはじめます。経験上それを知っていた室町プロは、人が消えた妙岐水道で勝負することに決めました。しかし12時50分には戻らなければなりません。そこがギリです。つまり室町プロに与えられた時間はわずか10分。そこで勝負しようとハラを括ったのです。
しかしスペースが空いたといっても叩かれ続けた魚はイージーに口を使いません。そこで室町プロが辿り着いた作戦はテキサスリグからネコリグに変えるというもの。つまり弱い釣りに落としてなんとか食わせようとしたのです。
室町プロは1.3gのネイルシンカーを入れたストレートワームを葦に絡めて数秒シェイクという行為を繰り返しました。
わずか10分間という制限の中、極限の集中力を持って葦を撃ち続けた室町プロのリベリオンに12時47分、確かなバイトが!
「来たっ!!」
その瞬間、身体が反応しました。人生をかけて思いっきりアワセをくれた室町プロのロッドが唸りました。見事にフッキングしたのです。それからは無我夢中でした。時間にして数秒でしたが、10分にも感じられたやりとりの末、慎重に寄せてネットインさせた魚は楽勝のキロアップ。この魚が事実上、室町プロの優勝を決定付けました。
帰着3分前のこの魚が室町プロにビッグな勝利をもたらしました
室町プロはGo Proでその時の模様を録画しており、ご自身のFacebookにもUpされましたが、思いっきり吠えていましたね。間違いなく2022年の名場面集に編集される動画でしょう。
https://www.facebook.com/yuichiromuromachi/videos/2021660924678955
残された仕事は帰着に間に合うように帰るだけです。室町プロはクイックにエレキを上げて潮来港に戻り、栄光のウィニングウェイインに向かったというわけです。
仮に室町プロがこの日ノーフィッシュだった場合、順位は11位まで下がっていました。それを考えると、室町プロの最後の粘りが見事に結実したといえましょう。
- タックルチェンジも勝因
室町プロが動員したタックルですが、初日に5gテキサスリグで3本の魚を獲ったシステムは
ROD:ブレイゾン721MHB
REEL:SS-SV 105XHL
LINE:モンスターブレイブZ 14lb.
というもの。
ロッドに関して「72という長さとバキバキでないしなやかさが気に入っています。30cm程度のシャローで魚を掛けると、硬すぎるロッドだとすっ飛んできてしまいます。水中で魚がイヤイヤをする時にフックが貫通するのですが、その前に飛び出てきてバレることが頻発します。その点、このロッドはシャローで掛けた魚もしっかりフックアップさせてくれるしなやかさを持っています」と言及していました。
2日目に貴重な1本の魚を獲ったタックルは
ROD:リベリオン661M/MLFB
REEL:SS-AIR 8.1L
LINE:モンスターブレイブZ 10lb.
というシステムですが、これにも裏話があります。
実は室町プロは当初リベリオン661M/MLFBにスティーズミノーをリグっていました。しかし前述のようにスローに攻めたくなった2日目はネコリグにシフト。その時にデッキにあった汎用性が高いリベリオンに気が付いたというわけです。
室町プロはそのロッドに組んであったアルファスSV TWを外し、さらに他のロッドに組んであったSS-AIRを外してリベリオンと組みあわせたのです。
「シャロークランクからジャークベイト、果てはベイトフィネスのネコリグまで使える汎用性の高いリベリオン661M/MLFBを持っていたことが勝利につながったと言えます」
と語っていましたが、その臨機応変な対応が勝利を呼びよせたと言っても過言ではありません。
- 翌日も仕事
実は室町プロはキャスティング稲毛海岸店に勤務する勤め人。当然、翌月曜日は仕事になるわけで、肉体的にキツイのは想像に難くありませんが、
「四国や福島の試合の翌日も仕事です。ハードさは覚悟の上です。でも、甘えは許されません。ていうか気持ちよく試合に送り出してくれるので、頑張ることができるのだと感謝しています。疲れも感じません」と爽やかに語っていました。
室町プロ、本当におめでとうございます。
なお、このゲームでは初日、鈴木隆之プロが1本1122gを持ち込み12位発進(最終25位)、2日目は山下一也プロが1034gを持ち込み単日11位(最終24位)と見せ場を作りました。
こうして2022年最初のメジャートーナメントでDAIWAメンバーが勝ったことで、この先に控えるW.B.S.やJBのトーナメントにおいてもますます期待が高まります。
若手とベテランがいい感じで噛み合っているDAIWAチームの今後の活躍にご期待ください。
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