Vol.02 B.A.S.S.オープン・ノーザン地区第1戦編
DAY1
予想外のハイウエイトが続出
「あそこの"野池"で釣れてくれればいいんですけど......」
楽しみ半分、不安半分、そんな表情を浮かべながら藤田プロは米国ツアーデビュー戦の朝を迎えた。例の"野池"までは10分足らず。水深はど真ん中で3~4mほど。これといって目立つカバーやストラクチャーはない。特徴としては、タイド(潮汐)の影響が小さく、水位が上下しにくいエリアであること。
プラクティスでビッグフィッシュをキャッチしていたスイムベイトからスタートするもバイトがなく「もしかして魚が沈んだ?」とネコリグへシフト。藤田プロのその読みが的中し、5尾のリミットをメイクしたものの、プラクティスのようなサイズが入らない。そこで次なる一手に選んだのがDAIWAラピッズブレード(チャター系)+ラピッズテールと、バルキーなホグ系ソフトベイトのリーダーレスダウンショットだった。この閃きがまたも当たって、ネコリグでキャッチしたバスをすべて入れ替えることに成功。目標にしていた15Lb(≒6800g)をクリアし、32位で1日目を終えた。
「約16Lb(≒7200g)釣れて、自分の中ではうまくいったと思ってました。キロに換算すると7kgを超えていて、日本の感覚だとかなりいいウエイトなんですよね。けど、実際は(集団の中に)埋もれていましたね」
たしかに、たとえば藤田プロ自身がJBトップ50遠賀川戦の1日目にマークした7050gは、JB戦における遠賀川記録とも言われるほどのウエイト。日本で5尾7kgを釣れば、多くのフィールドでトップに絡むことができるわけだが......。
しかしながら、出場225人中の32位は決して悪い位置ではない。というのも、藤田プロのウエイトは15Lb15oz(≒7200g)で、3日目の決勝に進めるボーダーの10位の選手は18Lb3oz(≒8200g)。その差は2Lb4oz(≒1kg)。1日目の藤田プロの最大魚である4Lbクラスがもう1尾釣れていれば18Lbに届いていたことを考えると、32位という順位で見るよりも、ウエイトでは好位置に着けていたといえる。とはいえ、20Lbオーバーが6名もいたのは想定外だった。プラクティス2日目、藤田プロはこのように言っていた。
「今回の試合は、なんとなく遠賀川戦っぽくなりそうな雰囲気なんですよね」
ジェームスリバーの水温は、エリアによって異なるものの、概ね16~17℃だった。そして潮回りは満月の大潮(遠賀川戦は新月の大潮)。藤田プロは、産卵を控えたバスがシャローへ一気に押し寄せると予想していた。これは試合後にわかったことだが、1日目の上位陣の中にはベッド(産卵床)のサイトフィッシングで釣ってきた選手がいた。プリスポーン(産卵前)とミッドスポーン(産卵中)、この季節感のズレによって、藤田プロが出遅れたとも、上位陣が先制したともいえる1日目だった。
DAY2
トップ10=3日目の決勝へジャンプアップ!
2日目、早朝のジェームスリバーは濃霧に包まれ、安全を考慮して1時間20分遅れのスタートとなった。藤田プロはこの日も例の"野池"へ直行。プラクティスでプレッシャーについて語っていたことが現実となり、"野池"では「JBマスターズ戦のようにボートが等間隔に並ぶ」タイミングもあったという。そんな状況下でも、DAIWAでテスト中のスピニングロッド61L(遠賀川戦ウイニングロッド)を武器に、ジャパニーズフィネスを駆使して1000~1200gでリミットメイク。藤田プロがその天才性を発揮したのはここからだった。
「ちょっと気になっていた釣りがあって、それを試してみたら5投目くらいに食ったんです。ちゃんと掛からなかったんですけど、それがめちゃくちゃデカかったんですよ。で、フックを交換して同じところに投げたら1600gくらいのバスが釣れました」
試合中、それまで釣れていたルアーを替えることができるのは、藤田プロの経験に基づいた柔軟性によるものだろう。「気になっていた」理由がまた興味深い。
「フロリダ種のラージマウスだからこういう釣りかな、と思ったんです」
この秘策は今後の試合でも効果を発揮しそうなため、本人の希望で明かすことはできない。今は「ジグスト用にDAIWAで開発しているベイトロッド73H-ST(ソリッドティップ)を使用したジャパニーズビッグフィッシュパターン」とだけ。
「たらればになってしまいますけど、1日目にこの釣りを試していれば20Lbを超えられたかもしれないですね。周りでけっこうデカイのが釣れてましたから」
2日目の藤田プロは、単日4位の18Lb12oz(≒8500g)をウエイイン。1日目との合計スコアを34Lb11oz(≒15710g)として、32位から一気に8位までジャンプアップ。米国ツアーデビュー戦にして見事に3日目の決勝進出を果たした。
DAY3
「ビッグフィッシュパターンをやり通します!」
8位の藤田プロとトップのキース・ポシェとの差は約6Lb。決勝に進出した時点で10位以上が確定しているため、藤田プロは「ビッグフィッシュだけを狙って行きます」と力強く断言してスタートした。選手数が200名超から10名に絞られたこともあって、前日は選手がひしめき合っていた"野池"も閑散としている。10時過ぎに取材艇で行ってみたところ、そこには藤田プロの姿もなかった。このエリアをシェアしていた選手いわく「キョヤ(京弥)は移動した」と。
「開始すぐに1尾キャッチできたんですけど、その後がまったく続かずチカホウミニーに行きました。チカホウミニーをやるなら早いほうがいいと思って」
藤田プロはこの日、往復1時間半の移動リスクを承知で勝負を賭けていた。JBトップ50やマスターズで何度も年間総合優勝していることから誤解されやすいのだが、藤田プロの戦い方は決して安定志向ではない。それとはむしろ真逆で、その日その日でトップスコアをねらいにいく超攻撃型を本分としている。ジェームスリバー戦の決勝で、ビッグスコアを記録することはできなかった。しかし、アメリカでもこれまでどおりに攻めの姿勢を貫けたことは、「米国ツアーデビュー戦10位」という結果以上に、今後の藤田京弥プロの活躍を予感させる。
日米連戦の過密スケジュール、渡米直後の疲労と時差ボケからくる体調不良、ボートトラブル、航路すらわからない初めてのフィールド、充分とはいえない練習期間......、さまざまな障害を乗り越えての10位入賞は、間違いなく快挙といえる。
表彰式を終えると、藤田プロは再びジェームスリバーにボートを浮かべた。聞けば、この試合で優勝した木村建太プロのパターンを試したいのだという。練習から上がるころには、辺りはすっかり暗くなっていた。努力を惜しまない天才は、きっとオープン参戦初年度でエリート出場権を手にしてくれるだろう(Vol.03ロスバーネット戦編へ続く)。
日本でも決勝進出は当たり前だった藤田プロ。米国デビュー戦においても緊張することなく冷静にメディア対応していた(英語は勉強中)
[ジェームスリバー戦メインタックル]
■ネコリグ用
ロッド:61L(スピニングロッド/プロトタイプ)
リール:イグジストLT2500S-XH(クイックドラグノブ仕様)
ライン:UVF ソルティガセンサー 12ブレイドEX+Si 0.6号
藤田プロコメント:61L(スピニングロッド/プロトタイプ)は、JBトップ50遠賀川戦のウイニングロッドです。ワームのノーシンカーリグからI字系やシャッドのようなプラグまで、なんでもOKな一本です。ラインは、フロロカーボンだったら4Lbをベースに6Lbまで、PEなら0.6号が基準になります。プロトタイプですが、すでにドンピシャなフィーリング。ルアーの操作性の高さは感動するレベル、なのにキャスト時や魚を掛けてからはよく曲がってくれる。現時点でもう何も言うことがない出来です。
■ネコリグ/パワーフィネス用
ロッド:68MH(スピニングロッド/プロトタイプ)
リール:イグジストLT2500S-XH(クイックドラグノブ仕様)
ライン:UVF モアザンセンサー 12ブレイドEX+Si 1.5号
藤田プロコメント:68MH(スピニングロッド/プロトタイプ)はパワーフィネス用ですが、詳細はまだ固まっていません。組み合わせるリールは、61Lもこの68MHも、すべてクイックドラグノブ仕様のEXIST LT2500S-XHです。ラインは、68MHにはUVFモアザンセンサー12ブレイドEX+Siの1.5号です。このPEラインが、強くて、ガイドの抜けもよくて、正直、これまで使ってきたPEの中でずば抜けてイイです。人生が変わりました(笑)。
■リーダーレスダウンショット用
ロッド:73H-ST(ソリッドティップベイトロッド/プロトタイプ)
ライン:スティーズフロロクロスリンク20Lb
藤田プロコメント:73H-ST(ソリッドティップベイトロッド/プロトタイプ)は、ジグスト用として開発をスタートしたのですが、これが使ってみると意外になんでもできる。軽いルアーの操作性も高いですし、もちろんパワーがあるのでカバー撃ちやビッグベイトもこのロッドでやっています。
ロッド:リベリオン701MFB-G
ライン:スティーズフロロクロスリンク16Lb