Vol.3 B.A.S.S.オープン・セントラル地区第1戦/ロスバーネット編
予選1日目の7時59分、藤田プロが操るビッグベイトにビッグバイト!水面を割ったのは、スコアアップに大きく貢献するであろう推定5Lb(≒2300g)のバスだった
藤田京弥プロの米国チャレンジ2戦目
米国ツアーデビュー戦となったB.A.S.S.オープン・ノーザン地区の開幕戦(ジェームスリバー戦)を、見事10位でフィニッシュした藤田京弥プロはその3日後、今度はセントラル地区の開幕戦が行われるミシシッピ州ロスバーネット湖へ移動した。既報のとおり、藤田プロは今期B.A.S.S.オープン・ノーザン地区とセントラル地区の計6試合にエントリーしている。それぞれの地区で年間ランキング上位3名に与えられる来期B.A.S.S.エリートの参戦権獲得が、自らに課したミッションだ。各地区3試合しかないため、1戦でも大外ししてしまえばその地区からのエリート昇格は絶望的となる。オープンは、エリートの下部カテゴリーではあるが、220人以上の選手がエントリーする人気シリーズ。年間3位にラインクインするのは我々が想像する以上に高いハードルだ。
カバー天国は見掛け倒し!?
ミシシッピ州の中央部に位置するロスバーネット湖はパールリバーを塞き止めた人造湖で、古くからバストーナメントが盛んに行われてきた名門フィールドである。アメリカのバスフィールドといえば「広大」というのが我々日本人のイメージだが、ロスバーネットは本湖だけの面積を比べると霞ヶ浦(西浦)よりも小さい。200艇以上が参戦するトーナメントにしてはいささか物足りない印象を受ける。プラに入って2日目の藤田プロは、ロスバーネットの印象を次のように語った。
「ジェームスリバーのほうが広かったですけど、タイダル(潮汐の影響で水位が上下する)リバーなので魚の居場所は絞りやすかったかもしれない。ここは無限にカバーだらけだし、水深も水質の変化も少ないから絞り込みにくい。だけど、必ず魚が溜まっているエリアがあるはずです」
水辺を縁取る豊かな植物帯は3m級のアリゲーターにとっても絶好の環境だ
豊富なカバーのチェックに用いたタックルは2セット。ヘビーテキサスリグにはSTEEZ C74MH+【TOPGUN】、STEEZフロッグにはC67MH-FR【FROGGER】を組んだ。リールはいずれもZILLION SV TW1000、ギア比は同リール最高のXHL(8.5対1)をセレクト
公式プラクティスを終えて
プラクティスでは川筋から本湖全域とメジャークリークまでを隈なくチェックした藤田プロ。リリーパッドや各種ウイードが繁茂するシャローフラットもあれば、マリーナや別荘地のドック、石積みやオフショアの地形変化等々、バスが好む要素は随所に見られる。
「とりあえず"やること"が見つかったのはよかったです」
試合前日にこう話して安堵の表情を浮かべる一方で、藤田プロには気がかりなこともあった。それは、今大会においてどれだけのウエイトを持ち込めば上位に食い込めるかということ。もちろん1oz(≒28g)でも重いウエイトを持ち込むのに越したことはない。だが、目標値となるウエイトは把握しておきたい。1日平均15Lb(≒6800g)持ち込めば予選を通過できるのか。あるいは藤田プロの耳には入っていないだけで、他選手が15Lbを最低ラインと見ている可能性もゼロではない。唯一得た情報は、直近に開催されたローカルペア戦の優勝ウエイトが19Lb(≒8600g)で、15Lb8oz(≒7000g)が6位相当のウエイトということだった。
「直前の練習では釣り込んでいないので何とも言えないですけど、行く場所行く場所で2本はキーパーをキャッチできたので、リミット(5本)は釣れると思います。いかにでかい魚を1本でも多くキャッチできるかがキーになりそうですね。1日目に20Lb(≒9000g)釣ることができれば、2日目は前日のリリースフィッシュをねらって凌ぐ展開も考えられます」
藤田プロが監修する73H-STは、本人の想定を超える汎用性。アメリカで戦ううえで、すでに欠かせないロッドとなっている
カバーに加えてロスバーネットはマンメイドストラクチャー(人工構造物)も非常に多彩だ。プラを終えて「(試合で)やることが決まってよかった」と藤田プロが安堵したのも頷ける
予選1日目、クイックリミットからのビッグバイト!
全選手のスタートを見送ってから藤田プロのファーストスポットへ行ってみると、すでに4尾のキーパーをキャッチしていた。ボートランプを囲う石積みから、メインベイトのラピッズブレード&ラピッズテールで3尾、ビッグベイトで1尾キャッチしたという。直後に5尾目を掛けた藤田プロは、スタートから1時間足らずで5尾のリミットメイクに成功。その魔法のような素早い釣りを目の当たりにしたコアングラー(同船するアマ選手)の、あっけに取られた様子が印象的だった。ウエイトは推定9Lb(≒4000g)ではあるが、まずは順調なスタートを切ることができたといえるだろう。
帰着までは7時間以上ある。「1日目に20Lb釣ることができれば......」という言葉を思い出して期待が膨らんだ。
その瞬間が訪れたのは7時59分のことだった。石積みギリギリにビッグベイトを投げ入れて数回首を振らせると、ルアーを中心にモワンと大きく波紋が広がった。その次のキャストでバイト! フッキングが決まってプロトタイプの73H-STがカーブを描く。ほんの数秒で寄せて一気に抜き上げようとした瞬間、ド派手な飛沫を残してラインテンションが抜けた。痛い......、痛すぎるフックアウトだった。
予選1日目のスタート直後から、藤田プロはラピッズブレード+ラピッズテールで順調にキーパーをキャッチしていったのだが......
ビッグベイトに食ってきた推定5Lb(≒2300g)を痛恨のフックアウト
セントラル地区第1戦は46位
とはいえ、早い段階でビッグフィッシュを掛けたことからその後の展開が期待された。しかし、1oz刻みの細かい入れ替えはできたものの1日目は9Lb14oz(≒4500g)で75位。予選通過ラインの10位の選手とは6Lb(≒2700g)もの差が開いてしまった。明くる2日目は戦略を変更して朝からビッグフィッシュに照準を定めるも願い叶わず。それどころか、メインエリアで他選手とのバッティングが相次ぎ、苦戦を強いられた。ラピッズブレードとビッグベイトで攻めた1日目に対して、2日目の藤田プロはスピニングタックルを手にすることが多かった。
「2日目はかなり苦戦しましたね。前日に入らなかった石積みがあるのを思い出して行ってみました。一見するとショボそうなんですけど、誰もいないので入ってみたら、けっこう釣れて。結局、2日目にウエイインした魚はほとんどそこで釣りました。あそこがなかったらこの試合は完全に終わってましたね」
キッカーフィッシュを獲り返すことはできなかったが、2日目は11Lb13oz(≒5350g)を釣って46位までジャンプアップすることができた。「(セントラル地区は)残り2戦で両方とも決勝に残らないと(10位以内に入らないと)エリート昇格は厳しいでしょうね」と藤田プロは言うが、これも本人が言うとおりセントラル地区からのエリート昇格の可能性は、2日目の粘りによって首の皮一枚繋がった。
藤田プロの次戦は、ニューヨーク州レイク・オナイダで7月7~9日に開催されるノーザン地区第2戦だ。オナイダの優勢種はスモールマウスバス。藤田プロが得意とするターゲットということで大いに期待したい。
予選2日目、柔軟な対応でリカバリーして46位まで順位を回復。エリート昇格を目指す藤田プロにとって、首の皮一枚でなんとか凌ぎきったセントラル地区開幕戦となった