Ultimate8月11日号

特集

W.B.S.第4戦に見る

草深幸範プロの冴え渡るタックルセッティング

 

 去る723日に行われたW.B.S.4戦において草深幸範プロが5位に入賞したことは前回のこのコラムでレポートさせていただきましたが、その後、同プロに追加取材し、タックルに関して貴重な話を聞くことができたのでご紹介したいと思います。

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クレバーな戦略を駆使して第4戦に5位入賞した草深チーム

 

 第4戦での草深プロの釣りをおさらいすると、スタート直後、西浦のシャローに行くもボートが「亀の子」になりそうな減水ぶりに驚いて、当初のメインプランである洲の野原に移動。各スポットに点在するシャローカバーをくまなく攻めて1本ずつキーパーを重ね、42550gで帰着したというもの。

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恒常的な減水が霞ケ浦を難解にさせています

 

 ゲーム前から厳しい試合になると予測して、あらゆるリグを総動員してミズヒマワリ(ナガエツルノゲイトウ)が群生するカバーなどの様々なスポットを攻め、とりあえず1本。その1本が獲れたら次の1本を目指しキーパーを重ねていくという地道な作戦が奏功したと言えましょう。

 この時期の定番である流入河川も試合前は視野に入れていましたが、熟考の結果マリーナに近いマイウォーターともいえる洲の野原をチョイスしたことも正解でした。外すリスクが一番少ないプランを実行したのです。W.B.S.のレギューラートーナメントはこの試合を含めて残り2試合でした。同プロの脳裏にはA.O.Y.への青写真が描かれていたはず。ゆえに確実に魚を獲れる可能性が高いプランを採用したことは実にクレバーだったと言えましょう。 

 4本の魚をすべて異なるリグで釣ったことから、同プロはその日の釣りを「ジャンクフィッシング」と評しましたが、いまの霞ヶ浦・北浦においては、いわゆる「王道」の釣りは成立しません。バスがどのルアーを食うか分からない状況においては、とにかく「何でも撃ってみる」という釣りだけが結果をもたらすのです。

 ですから草深プロは様々なタックルを準備しました。どんな条件にも対応できる備えがあれば、不安のないゲームを展開できるからです。そんななかでも同プロは以下の2システムがとくに大きな戦力になってくれたと語っていました。「シビアなコンディションで、なんとか魚をウェイインすることができたのも、これらのタックルのおかげでした」。

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草深プロが挙げてくれた第4戦入賞の決め手となった2つのタックルシステム

 

 そのタックルとは

【ジグ用】

ROD: BLX SG 681 MH/MFB

REEL:スティーズCT SV TW 700XHL

LINE:モンスターブレイブZ 13lb.

LURE:3.5gジグ+ギル系ワーム

 

 草深プロはこのシステムに関して、とくにロッドについて熱く語ってくれました。

「私が霞ヶ浦のカバーで3.5gから5g程度のジグを使う場合、このロッド= BLX SG 681 MH/MFBがエースになります。これ以上のものはないと思います。このロッドのどこがいいのかというと、表示通りティップがMHでバットがM(通常のMHクラスのロッドに比べるとバットが軟らかめ)、これがキモです。軽いルアーでもバットまでしっかり曲がってくれる。だから投げやすいし扱いやすい。

 そもそもジグを扱う場合、先が軟らか過ぎるとカバーでスタックしたり、魚を掛けてもそこから引きずり出してくるときに手こずったりすることがあります。それらをMH/Mというバランスが避けてくれるわけです。さらにカバーゲームにおけるパワーフッキングにおいても、アワセ切れを防いでくれます。それがこのロッドの素晴らしい点だと思っています。第4戦でも貴重な魚を獲ることができました。厳しい条件下では、こうした『ちょっとした違い』が釣果に結びつくのです。

 ラインは13lbでした。ある程度フィネス感を出したいので12lbを使いたいところですが、少し心細い。でも14lb.では太い。その結果13lb.に落ち着いたわけですが、リグの操作性や信頼性も、キャストフィールもまったく不安はありませんでした。とにかく、この組み合わせは私にとって最強のジグシステムだといえます」 

【パワーフィネス用】

ROD:STEEZ リアルコントロール S68MH-SV

REEL:CERTATE LT 2500H

LINE:UVF ソルティガセンサー12ブレイド EX+Si 1.5

LURE:パワーフィネスジグSS 3.5g 

「このシステムは、ミズヒマワリなどのカバーの下にサスペンドしているバスをパワーフィネスで狙うためのものですが、これもロッドが強烈にいい仕事をしてくれます。

 とにかくこのロッドは凄い。何も言うことはありません。感度は言うまでもなく、軽くてバランスがいいから一日振っていても疲れない。

 いままでは例えばリベリオンの701HRSなどの番手でパワーフィネスを行ってきました。それも悪くないんですが、このS68MH-SVMHという表示でもかなりしっかりしており、硬い。だから安心してパワーフィネスゲームを繰り広げることができ、デカイ魚を獲ることができます。私にとっては究極のパワーフィネスロッドといえます。自分でも2本購入しました。

 それとラインですが、私はPEラインの場合、12ブレイドしか使いません。その理由は、一番細いからです。だから投げやすいしよく飛んでくれます。霞ヶ浦の場合、竹のカバーが少ないので根ズレの心配もそれほどありません。だからキャスタビリティーに優れた細い方が適しているのです。使いながら適宜先端から3mほど切れば、常に新鮮な状態で使えます。

 とにかくラインやフックなど魚の口に近い部分のタックルは一番大切ですからね。今の霞ヶ浦での「貴重な一本」を逃さないための必須アイテムです」 

 草深プロは5位入賞の決め手となったタックルをこう解説してくれました。

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こうして4本の魚を持ち返った草深プロは年間暫定ランキング2位に着けました

 

  • 3度目のA.O.Y.へ虎視眈々 

 さて、W.B.S.に限らずバストーナメントを戦う者にとっての最大の栄誉。それがA.O.Y.(アングラ―・オブ・ザ・イヤー)。

 草深プロは第4戦で5位に入り年間ランク2位に着けました。累計獲得ポイントは51ポイント。ちなみに1位の保有ポイントは55ポイントで、3位は橋本卓哉プロの46ポイントです。

 今年からポイント制が導入されたW.B.S.では以下のような配分でポイントが付与されます。

優勝=25ポイント

2位=22

3位=19

4位=17

5位=15

6位=13

以下15位まで1ポイントずつ減ります

15位=4

16位以下は一律2ポイントが付与されるというわけです。 

 A.O.Y.レースにおいて、一番大切なことは勝つことより外さないことです。現に草深プロの場合、これまでの成績と獲得ポイントは

1戦 7位 12ポイント

2戦 8位 11

3戦 6位 13

4戦 5位 15

 このように、勝利はありませんがすべてシングルフィニッシュしています。つまり1試合も参加点の2点で終っていない。この安定性が大事なのです。A.O.Y.はどんな組織においても、季節によって得意不得意がない真のオールラウンダーに与えられる栄誉なのです。

 この結果を見て草深プロは以下のように分析してくれました。

「選手のレベルも年々上がって来ています。そして状況は相変わらず厳しい。だからとにかく今年、ゼロ帰着はしない。とにかく釣ってくる。拾いまくる釣りを目指しました。その考えは間違っていなかった。だからポイントが取れています。タックルの卓越もそれを可能にしてくれています」

 残るは92324日の最終戦です。草深プロは2012年、2017年に続いて3回目のA.O.Y.獲得を目指します。もちろん橋本プロも十分圏内に位置しております。ちなみにA.O.Y.4回獲得は橋本卓哉プロと故・本山博之氏のみ。もし橋本プロが逆転でA.O.Y.の座を射止めれば、単独で最多5回獲得という大記録を打ち立てることになります。

 それでは9月の最終戦における赤羽修弥、橋本卓哉、草深幸範、各プロの健闘を祈りたいと思います。

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2022年は橋本プロを祝福した草深プロでしたが、果たして今年は......

 

特集2

見せ場を作った山下兄弟

JBマスターズ第3戦:霞ヶ浦

 

 山下一也プロが3位に入賞したJBトップ50霞ヶ浦戦から1週後の72930日、同じ霞ヶ浦でマスターズ第3戦が開催されました。

 この試合で見せ場を作ったのがDAIWAチームの山下兄弟。初日に弟の尚輝プロが33118gをウェイインして単日2! 2日目には兄の一也プロが単日3位の31906gを持ち込みました。

 総合では残念ながら尚輝プロが11位、一也プロが19位に終わってしまいましたが、今後の戦いに大いに期待を持たせる結果だったと言えましょう。今後とも二人の躍進に注目したいと思います!!

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初日に単日2位で折り返した山下尚輝プロ。常に存在をアピールしている山下兄弟ゆえ、これからの活躍が期待されます