2024 New year Special Dialogue
清水盛三 × 藤田京弥
清水盛三(しみず・もりぞう) 1970年生まれ。プロデビューした1991年にNBC西日本オープンのAOYを獲得、1997年にJBジャパンスーパーバスクラシック制覇。2001-2002年にB.A.S.S.オープンに参戦し、その年にバスマスターツアー(現ELITE)参戦権を獲得。2006年のケンタッキーレイクで日本人として初めてELITE戦で優勝。日米を往復するスタイルでアメリカのツアーを18年にわたって戦った。プロツアー引退後もその実力は衰えず、2022年にBasser Allstar Classicを勝っている。
藤田京弥(ふじた・きょうや) 1996年生まれ。トップ50年間チャンプ、ジャパンスーパーバスクラシック、マスターズ年間チャンプのJB 3大タイトルを制した後、2022年にB.A.S.S.オープンに参戦し、その年にELITE参戦権を獲得。ELITEルーキーイヤーの2023年にレイク・シャンプレインで優勝し、ELITEにおける日本人歴代最高の7位でこのシーズンをフィニッシュした。この春(2024年3月)には世界最高の権威と歴史をもつ「ザ・クラシック」ことB.A.S.S.バスマスタークラシックに初出場する。
■2024 ELITEは"春の嵐"が吹く⁉
盛三 2023年の活躍はほんま凄かったネ! 俺をウソつきにせんでくれてありがとう(笑)。「この子(京弥)はいずれアメリカでもチャンピオンになれる器や」って公言しとったからさ。
京弥 ありがとうございます(笑)。2024年もがんばります。
盛三 2024シーズンのELITEはどんなスケジュールなん?
京弥 それがちょっとイレギュラーな感じなんですよ。とくに春の試合が......。
Bassmaster Classic 3/22-24 グランドレイク(オクラホマ州)
第5戦 5/9-12 レイク・マーレイ(サウスキャロライナ州)
第8戦 8/8-11 レイク・シャンプレイン(ニューヨーク州)
第9戦 8/16-18 セントローレンスリバー(ニューヨーク州)
盛三 ええッ!? 開幕戦がフロリダやないんや!!
京弥 そうなんです。トレドベンドとフォークで開幕戦・第2戦をやったあとクラシックを挟んで、南下してフロリダで第3戦と第4戦が組まれてるんですよ。
盛三 へぇ~! フロリダから始まらんのはたしかにイレギュラーやね。全9戦のうち、これまで試合経験のある湖はいくつ?
京弥 3つですね。
盛三 3つしかないの? オープンでもやったことがない?
京弥 はい。まだアメリカの試合に出て2年で、オープンも1年しか出てませんから。
盛三 そういえば俺もそーやったわ(笑)。
―― お二人ともオープンを1シーズンでクリアしてますからね。すぐにELITEに上がらずに、もう少しオープンで経験を積めばよかったとか?
京弥 いや、すぐにELITEに上がりたかったです(キッパリ)。
盛三 そんなんすぐにELITEでやりたいに決まってる。さっさと上がって質の高い経験を積んだほうがエエよ。
―― なるほど。話を戻すと2024シーズンの試合の組まれ方はたしかに珍しいです。例年であれば南部フロリダ州からスタートしたあと、スポーニング前線を追って北上しながら開催地をトレイルしていくものですが。
盛三 そうやね。お客さんに100lb.オーバー(※4日間・計20尾のトータルウエイトで約46kg)を見せるために、バスにいちばんウエイトが乗るプリスポーン(産卵前)のタイミングを見計らって試合が組まれることが多いからね。俺はもともとプリスポーンの試合が苦手だったけど、毎春そればっかりやらされて、学んで得意になった(笑)。
京弥 ハリスチェーンとセントジョンズリバーのフロリダ2連戦が4月に組まれてるんですけど、もうアフター(産卵後)なんじゃないかと。
盛三 間違いなくそう。もう余裕でアフターやろな。
京弥 ですよね。となると、2024年のELITEはベッド戦(産卵床のバスをサイトで釣る試合)が一つもないかもしれません。
■ゲームチェンジャーとライバルの台頭
盛三 俺がアメリカの試合に出始めたころはGPSもなかったから、オキチョビ※の試合はマ~ジ~で苦痛やったわ。キャナルとか本湖とかエリアにメリハリがある分、ハリスチェーンのほうがまだマシ。
※ レイク・オキチョビ: 面積は琵琶湖の約3倍! しかし平均水深は3mにも満たない、"超"巨大で水平線の彼方まで遠浅な湖沼。通称BIG O
京弥 最初はフロリダバスが苦手でした?
盛三 あんま好きじゃなかったなァ......、フロリダバスというより「フロリダの湖」が苦手やったわ。どこまで行ってもずーっと(水中に)グラスが生えとってエッジがないし、アシの奥には必ずバックウォーターがあるし(苦笑)。
京弥 2024年のELITE開催地だと盛三さんはどのフィールドが好きですか?
盛三 そうやね、4月のハリスチェーンは好きやな。セントジョンズリバーは......、あー、好きちゃうなァ。レイク・マーレイは好き、ここは京弥くんにとってビッグチャンスやな!
京弥 チャンスですね。(優勝を)ねらいに行ってイイ試合だと思っています。
盛三 レイク・ウィーラーでELITEが開催されるのってひさしぶりちゃう?
京弥 だと思います。大森貴洋さんが勝った試合(2016年の第4戦)が印象に残ってます。
盛三 俺のときはしょっちゅう試合がある湖やったけどなァ。6月末のスミスレイク! ここも相性よさそうやな!!
京弥 (にっこり)
盛三 あァ、記事になる対談やし、ナイショな(笑)。スミスレイクはスポッツとラージ両方おるからネ。俺はラージしかよう釣らんかったわ。初日リック(クラン)3位、俺6位で二人揃って絶好調やった試合があってんけど、その日の夜にサンダーストームが直撃して、ねらっとったエリアがグチャグチャに濁ってしまった。で、二人そろって仲良く2日目にトんだことがあったなァ(笑)。スミスのあとの第8戦シャンプレイン、最終戦セントローレンスリバーの流れは2023年といっしょなんやね。
京弥 はい。ここはもちろんチャンスなんですけど、2024年はライバルが増えるんですよ。2023年のオープンから勝ち上がってくる選手が強い。なぜなら昨年のオープン9試合が全戦ライブスコープの釣りが効くフィールドとタイミングだったから。釣りしてる映像を見ただけで「ヤバいなこの選手」、みたいな二十歳前後の若手ばかりです。
盛三 いわゆる「デジタルネイティブ」の世代やね。
京弥 彼らと比べると僕も若くないです(苦笑)。オープンから上がってくる子たちが9名全員ハイレベルなライブスコーパーなんですけど、ということは昨シーズン、中堅・ベテラン勢は一人もELITEの出場権を獲れていない。MLFからELITEへオープン経由で復帰しようとした選手たちも、2024年は誰も戻ってこれてないです。
盛三 魚探がゲームチェンジャーになったのはコレが初めてじゃなくて、俺がアメリカでやっとったころも、途中でGPSマップやサイドイメージが出てきて、それが試合を大きく変えた。例えば俺が渡米した当時、オフショアの釣りをするのは、そのフィールドによほど精通した選手と、ローカルに情報源を持ってる選手と、俺くらいのもんだったわ。とはいえ自分の場合はオフショアに着眼しても湖のインフォメーションがゼロやから、限られたプラの時間をだいぶ魚探がけに割いとったよ。
京弥 やっぱり"(群れやパターンを)見つけたらオフショアが強い"ですよね。よほどシャローにパワーがある状況でない限り。
盛三 そうやね。とくに春先のオフショアでいいシェルベッド(貝床)とか、いいレッジ(急峻なブレイク)を見つけたら、バスが百匹以上いそうなくらい1投1匹のペースで釣れ続くからさ。
京弥 そういうスポットをライブスコープで見ると、実際に百匹以上いますよ(笑)。
盛三 そうなんや(笑)。昔ケンタッキーで優勝した場所も、ライブスコープで見たら百匹以上おったんやろうなァ。開始30分でトップウエイト釣ったもん。いま思えば、当時はまだオフショアのスポットは穴だらけやった。ケンタッキーで優勝したときも、ガンターズビルでその年の単日MAXウエイトを記録して準優勝したときも沖に浮いてたけど、見渡すかぎり俺しかおらんかった。不安になったもん、「ここオフリミット(立入禁止エリア)ちゃうよな......?」って、マジで(笑)。
京弥 めっちゃわかります(笑)。不安になりますよね、見える範囲にほかにだーれもいないと。
盛三 つまり俺は、GPSマップやサイドイメージが普及して、試合でオフショアの釣りが一気に開拓されたタイミングを経験した。そして京弥くんは今、そこにさらに釣りの精度を高める要素(ライブスコープ)が加わった状況で戦ってるわけやね。もっと若い世代のライバルがいっぱいELITEに上がってきたとしても、京弥くんならヤレるよ。アメリカでもチャンピオンになれる! 俺をウソつきにせんでな!(笑)
京弥 はい、頑張ります(笑)。
■「トラブルにめげるな!」
―― 盛三さんから京弥くんにアドバイスはありますか?
盛三 そんなんないよォ。ELITEで勝って、この春にはクラシックも経験する。実績でいうたらもう俺、ほとんど並ばれてますからねェ!(笑)
京弥 いやいや、そんな。僕なんかオープン(2022年)の時点でいろんなことがあまりにもツラくて折れそうになってましたから。
盛三 そうやろなァ......、もちろんわかるよ。「アメリカで戦う」って、表に出てこんことのほうが遥かにツラいもんな。そんなめっちゃ頑張ってる子に、「頑張れ」って言うのも違うしさァ......。ただ1コだけ。京弥くんと同じステージで、同じように日米を往復するスタイルで長くやってた俺が言えるのは、「トラブルにめげるな!」ってこと。
京弥 ほとんど毎試合のように"何か"起きますからね(苦笑)。
盛三 どんなに気をつけても、トラブルは避けようがないから、めげないことが大事。もちろん準備とかには充分に時間をかけて、避けられるトラブルはきちんと避けたうえでな。
京弥 そういえば僕、(カメラマンの齋藤)静吾さんに「盛三さんと似てる」って言われましたよ。準備に時間をかけるところとか。
盛三 俺も静吾から聞いてる。「京弥くんは朝おそいんですよ。国歌斉唱のときにボート降ろしてたりとか、現役のころの盛三さんと同じくらいおそい」って(笑)。そんなん言われても、何が起こるかわからんから慎重になってまうやんなァ?
京弥 そうなんですよねェ......。早く慣れて、そのへんもテキパキできるようにならなきゃですけど。
盛三 2024シーズンも期待して、ぜんぶの試合を見てますからネ! TEAM DAIWAのころから本場のツアーに選手を送り込み続けてるダイワの歴史を、藤田京弥の爪痕と足跡だらけにしたったらエエよ!
京弥 ありがとうございます。そのつもりで戦います。
京弥プロが被っているのは超30年モノの「TEAM DAIWAニットキャップ」。某ショップからデッドストック(しかもmint in pack)で最近エグり出された逸品だ。「えーッ! コレ俺もほしいわ!!」と盛三プロ